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前立腺がんのステージ|ステージ毎の詳細とグリソンスコアの関係

前立腺がんのステージとグリソンスコアとは

「納得した上で、前立腺がんの治療を受けたい」。そのための第一歩が、自分の前立腺がんの病状について「ステージ」「グリソンスコア(Gleason score:悪性度)」を把握することです。なぜなら「ステージ」と「グリソンスコア」は、前立腺がんの治療方針を左右するからです。前立腺がんの治療には数多くの選択肢があります。手術、放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法、監視療法などの種類がある上に、各治療法にバリエーションがあるのです。その中から、治療法を選択する際にカギになるのが「ステージ」「グリソンスコア」です。

では、「ステージ」「グリソンスコア」とは、どのようなものなのでしょうか?

前立腺がんがどこまで広がっているかを示す「ステージ」

ステージは、前立腺がんがどこまで広がっているかを、いくつかの段階にわけて示したもので、「病期」とも呼ばれます。このステージが治療方針を決める際に不可欠である理由は、ステージによって治療法が異なるからです。

そもそも、がんの治療で「ステージ」という考え方が生まれたのは、がんには、無制限に増殖する性質があるからです。前立腺がんの場合も、前立腺の中で次第に成長し、周りの組織に浸潤(1)さらに転移(2)する場合があります。このような性質があるため、その患者さんの前立腺がんが、どの段階にあるかを示すため「ステージ」という概念が生まれたのです。ただし前立腺がんは、タイプによって広がるスピードに差があります。中には、広がるスピードが極めて遅い場合もあります。

(1)浸潤:前立腺内のがん細胞が増殖して、前立腺を飛び出し、
周りの組織に入り込み拡大すること
(2)転移:離れた臓器や、リンパ節に癌細胞が広がること

1.TNM分類

T、N、Mという3つの観点でステージを分類したものです。

T前立腺内で、がんがどこまで広がっているか
Nリンパ節に転移があるか
M遠隔転移(前立腺から離れた場所にある骨や臓器[肝臓や肺など]への転移)があるか

前立腺がんワンポイント 01

「T」「N」「M」英語のそれぞれ示す意味は?

T、N、Mは、英単語の頭文字をとったものです。Tは腫瘍を表す“Tumor”の頭文字です。同様にNは“Node(リンパ節)”、Mは“Metastasis(転移)”の頭文字になっています。

T、N、Mのそれぞれで、さらに詳しく分類されています。

T(前立腺内で、がんがどこまで広がっているか)

T1:触診や画像では診断できないほど小さい
 T1a前立腺肥大症の手術で偶然に発見(切除組織の5%以下)
 T1b     〃         (切除組織の5%以上)
 T1c針生検で確認された腫瘍
T2:前立腺に限局(前立腺内だけに存在する)        
 T2a片側のみ(1/2以内)
 T2b片側のみ(1/2以上)
 T2c両側に存在
T3:前立腺被膜を越えている        
 T3a被膜の外側に広がる
 T3b精のうに浸潤
T4:前立腺の周りの組織(膀胱、直腸、骨盤壁)に広がる

N(リンパ節に転移があるか)

N:(リンパ節に転移があるか)        
 N0リンパ節への転移はない
 N1リンパ節への転移がある

M(遠隔転移(前立腺から離れた場所にある骨や臓器[肝臓や肺など]への転移)があるか

M:骨や前立腺から離れたところにある臓器(肝臓、肺など)に転移があるか        
 M0リンパ節への転移はない
 M1リンパ節への転移がある

前立腺がんワンポイント 02

がんの「ステージ」と「T」「N」「M」分類の関係性は?

一般的には、前立腺がんのステージについて「ステージ1」、「ステージ2」という言葉がつかわれます。この言葉とTNM分類の関係は以下のようになっています。

ステージ1T1(T1a、T1b、T1c)
ステージ2T2(T2a、T2b、T2c)
ステージ3T3(T3a、T3b)
ステージ4T4、N1(リンパ節転移あり)、M1(遠隔転移あり)

2. ABCD分類

以下のようにA、B、C、Dの4段階に分類されています。

A触診や画像では診断できないほど小さく、前立腺肥大症の手術で偶然に発見されたもの
[TNM分類では、T1aとT1bに相当]
B前立腺内に限局(前立腺の内部だけにがんがある)
[TNM分類では、T2に相当]
C前立腺周囲にとどまっているものの前立腺被膜をこえている、または、精のうに浸潤している
[TNM分類では、T3とT4に相当]
D転移がある(前立腺から離れた位置にあるリンパ節への転移、または、骨や臓器(肝臓、肺など)への転移)
[TNM分類では、N1とM1に相当]

がんの“顔つき”を点数化
「グリソンスコア」で前立腺がんの悪性度がわかる

がん細胞には“顔つき”があります。人の顔がそれぞれ違うように、顕微鏡を使ってがん細胞を調べると、その形や大きさに違いがあるのです。この違いを元に、がん細胞を5つに分類したのが「グリソン分類」です。そして「グリソン分類」を使って、がん細胞を調べた結果から算出されるのが「グリソンスコア(Gleason score)」です。いわば“がんの顔つき”を得点化したものだと言えます。

グリソンスコアによって、前立腺がんの悪性度がわかります。この「悪性度」によって治療方針は変わるので、治療方針を検討するには、グリソンスコアが不可欠です。

1.「グリソン分類」の基準は“分化度”

体内の細胞は、「分化」と呼ばれるプロセスを経て、必要な機能や形態を獲得します。この「分化のプロセス」がどこまで進んでいるかを示すのが「分化度」です。

がん細胞は、正常細胞に比べて分化が不十分な状態にあります。さらにがん細胞を細かく調べると、分化度に差があることがわかります。また、この「がん細胞の分化度の差」によって、悪性度も異なることもわかっています。具体的には分化度が低いほど悪性度が高く、前立腺がんが広がるスピードが早くなります。

2.グリソン分類だけでは、前立腺がんの悪性度を判定できない

実際の前立腺がんでは、がんと認められる部分には、グリソン分類の点数が異なる領域が混在しています。そこで悪性度を判定するために、1番広い領域と2番目に広い領域の点数の合計値を使います。この合計値は「グリソンスコア」と呼ばれ、値が大きいほど悪性度が高いと判定されます。

グリソンスコア=一番広い領域の点数+2番目に広い領域の点数

6以下:低い
7:  中程度         
8~10:高い

たとえば以下の検体の場合、一番広い部分の点数は3、2番目は4となるので、グリソンスコアは7(4+3)となります。 グリソンスコアの計算例の図

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