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フォーカルセラピー QOLにこだわる部分治療

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前立腺がんの治療の柱である手術や放射線治療には、尿失禁や性機能障害などの合併症のリスクがあります。そして、実際に失禁や性機能障害が起これば、QOL(Quality of Life:生活の質)が低下してしまいます。これを防ぐには、失禁や性機能障害などの合併症のリスクが低い治療を選択する必要があります。では、どんな治療を選択すれば、QOLを低下させる合併症のリスクを低減できるでしょうか?

正常な組織を温存できる
前立腺がんの部分治療

前立腺がんの部分治療は、文字通り「部分的に」治療を行います。正常な組織を残すことができるので、手術(前立腺全摘術)より合併症のリスクが低くなります。

前立腺がんワンポイント

なぜ、手術で勃起障害が起こるのか?

勃起は、勃起神経によってコントロールされています。この勃起神経は、前立腺の周りを取り囲むように走り、陰茎に入ります。
手術で前立腺を全摘する際、できる限り勃起神経を温存できるように手術を進めます。しかし、全ての勃起神経を温存することは極めて難しいため、手術後に、程度の差はありますが勃起障害が起こることは避けられません。

勃起神経は前立腺のまわりを取り囲むように通っていますが、特に前立腺の下部には勃起神経の多くが集まっている束(神経血管束)が通っています。前立腺を全摘する際、この神経血管束を温存できたとしても、ほかの部分を走っている勃起神経も含めて全てを温存することは現実的ではありません。

前立腺がんの「部分治療」 転移のない前立腺がんの約30%に適応

実際に前立腺がんの患者さんから摘出された前立腺内部のがんの分布を観察したところ、以下のような結果が出ています。

・がんがとても小さく、悪性度が低い約15%
・がんが一部にとどまっている約30%
・がんが前立腺全体に分布している約55%

現在、約15%の「がんがとても小さく、悪性度が低い」患者さんは、厳重な経過観察を行う「監視療法」が行われています。一方で、残りの約85%の患者さんには、手術や放射線療法などの根治的治療が行われています。

しかし、最近では、約30%の「がんが一部にとどまっている」患者さんに対する治療として「前立腺部分治療」が注目されています。この治療は、がんのみを治療し、可能な限り正常組織を温存することで、がん治療と排尿や性機能の温存を両立させることを目指しています。

前立腺がんの部分治療が可能なHIFU(ハイフ)とは

HIFU(ハイフ)はHigh Intensity Focused Ultrasoundの頭文字をとった略語で、日本では「高密度焦点式超音波療法」と呼ばれています。

HIFUでは、耳で聞こえない高い周波数をもつ「超音波」を使います。HIFUの特徴は、照射器から照射された超音波を、体内の狙った場所に集められることです。ちょうど、虫眼鏡を使って太陽の光を一点に集めると紙が焦げるのと同じように、超音波の焦点を体内のある部分に設定することで、その部分を高温にできます。

この原理を応用することで、前立腺がんの「部分治療」が可能になります。HIFUによって前立腺がんがある部分を高温にすることでがん細胞は死滅。一方、その周辺の温度はほとんど変わらないため、正常組織は温存できるのです。

HIFUの特徴

1治療時間と入院期間が短い
2身体への負担が少ない
3失禁や勃起障害などの合併症のリスクが低い
ただし保険適用外となるため、手術や放射線治療よりも費用がかかります。

HIFUによる前立腺がん治療の流れ

1直腸に「経直腸プローブ」を挿入する
2「経直腸プローブ」によって得られた前立腺の超音波画像を確認しながら治療領域を設定する
3「経直腸プローブ」から治療用の超音波が照射され、前立腺がんがある部分が高温になる
4医師がモニターで治療状況を確認しながら微調整を加える

HIFUの特徴を活かすためには精度が高い「新しい生検」が不可欠

HIFUが前立腺がんの治療に使用されるようになったのは1999年です。しかし当時は、部分治療のためではなく、前立腺の全体を治療するために使われていました。その理由は、当時は前立腺がんの位置を正確に把握できる生検法がなかったからです。そのため、狙った場所をピンポイントに攻めるHIFUの特徴を活かせていなかったのです。

状況が変わったのは、MRIも合わせて使うことで前立腺がんの位置を正確に診断できる「新しい生検」が開発されたことです。「新しい生検」によって、前立腺がんの位置を示す3次元データを得られます。これを参照しながらHIFUを活用することで、前立腺がんのみを治療する「部分治療」が可能になったのです。

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