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肺がんってどんな病気なの?

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肺がんは、気管支や肺胞にできるがんです。初期の肺がんは治療によって「根治」を目指すことができます。「根治」とは、病気を完全に治すことです。

一方、病気が進行するとがん細胞は増殖して、血液やリンパ液の流れにのって肺とは別の場所に「転移」することもあります。転移しやすいのは肺の周りにあるリンパ節、他の部分の肺、骨、脳、肝臓、副腎などです。転移が起こると、薬物療法が治療の中心になりますが、以前と比べ選択肢が増えています。

肺がんワンポイント

「気管支」と「肺胞」は肺が機能するために不可欠

私たちの肺は両側に2つあり、呼吸によって取り込んだ空気中の酸素と二酸化炭素を交換する働きをしています。この働きを「ガス交換」と呼びます。

呼吸によって体内に取り込まれた空気は、空気の通り道である気管を進みます。気管は左右に分岐して肺の中に入ります。この分岐点から先の部分が「気管支」と呼ばれています。
肺内に入った「気管支」は先に進むにつれて枝分かれを繰り返し、次第に細くなっていきます。そして最終的には「肺胞」と呼ばれる袋状の部分に到達します。
肺胞ではガス交換が行われ、血液から取り出された二酸化炭素は気管支から気管を通り体外に排出されます。一方、ガス交換で血液に取り込まれた酸素は、血流にのって全身に運ばれます。

肺がんの症状 初期では無症状のことが多いため、早期発見には検診が重要

肺がんの主な症状は次のようなものです。

咳、痰、痰に血が混じる、発熱、息苦しさ、動悸、胸痛など

このうち咳や痰などの症状は、肺がん以外の病気(かぜ、インフルエンザ、肺炎など)でも起こるので、見分けることが難しいのが現実です。咳が止まらないなど、気になる症状が長く続く場合、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。

ただ、初期の肺がんは、咳などの自覚症状がない場合が多いので、早期発見のためには肺がん検診を受けることが大切です。

検診では胸部エックス線検査、喀痰(かくたん)細胞診などが行われます。ただし、胸部エックス線検査では発見が難しい肺がんもあります。

胸部CTを行うと、胸部エックス線検査では発見できない肺がんを見つけることが可能です。しかし胸部CTは、エックス線検査に比べて放射線の被曝量が増えるという問題があります。

そのため、現在では被曝量を減らした低線量の胸部CTが行われています。喫煙者では検査によって死亡率が低下することが期待できるというデータがある一方で、非喫煙者では、死亡率が低下するという明確なデータがありません。そのため、自治体などで実施する検診では行われていない状況です。また、低線量の胸部CTは、通常の胸部CTよりは被曝量が少ないものの、胸部エックス線検査と比べると被曝量が増えます。このようなデメリットがあることを理解した上で検査を受けることが大切です。

肺がんの「生存率」 つきあい方を知っておこう 

肺がんの患者さんの生存率として、よく使用されるのは「5年相対生存率」という指標です。この指標は、手術を受けた後、5年後の時点で生存している方の割合を示しています。

「5年相対生存率」は、肺がんの治療を行っている医療現場から上がってくるデータだけでなく、そのほかのデータも合わせて算出されています。手間をかけて算出されている理由は、肺がんの治療によって、どのくらいの割合の方の命を救うことができているかの指標とするためです。

このように、「5年相対生存率」は、肺がんと診断されたある患者さんが、この先どのくらいの期間生存できるかを知るために算出されたデータではありません。この点に注意して活用することが重要です。

ほかにも「5年相対生存率」のデータは、以下の3点を前提に活用するとよいでしょう。

第1に、「5年相対生存率」は、5年以上前に治療を受けた患者さんに対して、その後の状況を追跡して算出されます。肺がんの治療は日々進化していますが、現在の治療成果が反映された「5年相対生存率」が算出されるのは、5年以上先のことになります。

第2に、肺がんの進行段階を示す「ステージ(病期)」によっても、「5年相対生存率」の値は異なります。ステージが小さいほど(初期の肺がんであるほど)、「5年相対生存率」の数値は良くなります。目にした数値が、肺がん全体のものなのか、それとも、ステージ毎のものかを確認することが大切です。

第3に、ステージ毎に算出された場合でも、その中には、様々な年齢や健康状態の方が含まれています。

実際の数値は、目にしたくない方もいらっしゃることが想定されるので、このページには掲載いたしません。

数値は、国立がん研究センターがん情報サービスの「最新がん統計」で確認することができます。ただしこれはステージ別の数値ではありません。

ステージ毎の「5年相対生存率」は、国立がん研究センター中央病院の「肺がんの診断・治療・手術」で確認できます。

肺がんを予防するためにも原因を知っておこう

1) 喫煙は大きなリスクになる

喫煙は、よく知られているように肺がんのリスクを高めます。1990年から1999年にかけて行われた研究(*1)の結果によると、たばこを吸わない人と吸う人を比較すると、肺がんの発生率は男性では4.5倍、女性では4.2倍も高くなっています。

そのほかにも吸い始めてからの年数が長いほど、また、1日に吸う本数が多いほど、肺がんの発生率が高くなることがわかっています。

(*1)多目的コホート研究(JPHC Study) 中年期男女における喫煙と組織型別肺がん罹患との関連
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/254.html

2)できるだけ早く禁煙することが大事

たばこをやめた人を調べてみると、やめてからの年数が長いほど肺がんになるリスクが低いという結果が出ています。

現在たばこを吸っている人は、できるだけ早く禁煙を実行することで肺がんのリスクを下げることができます。

3)喫煙の影響が少ないタイプの肺がんの割合が増えている

肺がんには様々な種類がありますが、主なものは「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」の4つです。このうち「扁平上皮がん」と「小細胞がん」は喫煙との関連が大きいと言われています。一方「腺がん」と「大細胞がん」は喫煙との関連が小さいとされています。

4種類の肺がんの患者数を調べてみると、以前は喫煙との関連が大きいとされる「扁平上皮がん」が一番多くなっていました。ところが現在では、喫煙との関連が少ないとされる「腺がん」が1位となっています。

出典:日本胸部外科学会 Thoracic and cardiovascular surgery in Japan in 2016

4)男性の方が多いが、女性だからといって安心できない

日本人が一生のうち肺がんになる確率(累積罹患リスク)によると、男性は10.0%で、部位別の累積罹患リスクのランキングの2位です。

一方、女性の累積罹患リスクは4.8%で、男性の約半分です。しかし、女性の部位別の累積罹患リスクのランキングでは5位となっています。女性の肺がんは、決して珍しい病気ではないのです。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))

監修医師

小島 史嗣 Fumitsugu Kojima

聖路加国際病院
専門分野:呼吸器外科

専門医・認定医:
日本外科学会 専門医、日本呼吸器外科学会 専門医・認定ロボット手術プロクター、日本がん治療学会 認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


後藤 悌 Yasushi Goto

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
専門分野:臨床腫瘍学

専門医・認定医:
日本内科学会認定内科医 総合内科専門医 指導医、日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 指導医、日本がん治療認定機構 がん治療認定医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医 指導医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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