ダヴィンチは、手術を「支援」するために開発されたロボットです。ロボットというと、「医師の代わりに手術を行ってくれる」というイメージがありますが、実際は、医師が操作して動かします。医師の意図通りに正確に手術を行う。それがダヴィンチの役割です。
ダヴィンチを使用すると、拡大した視野の下で操作を行えるため、人の手よりも正確で細かい動きが可能です。そのため、従来の手術よりも出血量を減らせます。また、手術後の機能温存が期待できるというメリットもあります。前立腺がんの手術には、手術後に尿失禁や性機能障害(勃起障害)のリスクがあるのですが、ダヴィンチ治療では、そのリスクを下げ、機能を温存することが期待できるのです。
医師を支援するダヴィンチって
どんな装置?
ダヴィンチが支援するのは「腹腔鏡手術」です。そのために必要な3つの装置がセットになっています。
1つ目の装置は、医師が操作するロボットアームがある「ペイシャントカート」です。2つ目は、医師が着席して操作を行う「サージョンコンソール」。3つ目は手術をサポートするスタッフのためのモニターがついた「ビジョンカート」です。
「腹腔鏡手術」は、従来のお腹を開けて行う手術(「開腹手術」)とは異なります。お腹に数カ所の小さな穴を開け、そこから内視鏡や鉗子、カメラを入れて手術を行います。そのため「開腹手術」と比べると傷が小さく、入院期間も短いなどのメリットがあります。ダヴィンチは、この「腹腔鏡手術」を支援する装置です。
1:ペイシャントカート
–>ペイシャントカートには4本のロボットアームがついていて、その先に内視鏡や鉗子などを取りつける。
2:サージョンコンソール
医師はサージョンコンソールに着席して、ロボットアームの操作を行う。
3:ビジョンカート
ビジョンカートには内視鏡カメラの映像が表示される。サージョンコンソールで操作を行っている医師が見ているのと同じ映像を、ほかのスタッフも共有できる。
前立腺がんワンポイント 01
ダヴィンチの性能はアップしている
ダヴィンチは、アメリカのインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社が開発した内視鏡手術を支援するためのロボットです。
現在日本で使用されているダヴィンチには、SiタイプとXタイプがあります。このうち最新型はXタイプで、Siタイプに比べるとロボットアームがスリムになるなどの改良が加えられ、より自由度が高い手術が可能になりました。また特殊なカメラ(蛍光カメラ)が装備されたため、ICG(インドシアニングリーン)という薬剤を用いて、血流の評価やリンパ節郭清(リンパ節を取り除く手術)の精度を上げることが可能になりました。
緑に光っているのがリンパ管とリンパ節。場所が特定できるので、リンパ節の郭清の精度を高められる