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放射線療法を乳房部分切除術の後に行うのはなぜ?

乳房を残すことができたのに、「手術後に放射線治療を行います」という説明を聞くと、「なぜ?」と感じるかもしれません。

温存した乳房内には、手術で取り切れなかったがん細胞が残っている可能性があります。そのまま放置しておくと再発のリスクがあるので、がん細胞が残っていることを想定して、それをたたいておくことが大切になります。そのために行われるのが放射線治療です。

放射線療法に使われる放射線には、がん細胞のDNAを破壊する力があり、がん細胞を死滅させたり、増殖を止めたりすることができます。そのため、仮に手術で取り切れなかったがん細胞が残っていたとしても、「乳房部分切除術」の後に放射線治療をすることで再発のリスクを下げられるのです。

気になる副作用には、どんなものがある?

乳がんの場合、放射線を照射するのは乳房だけなので、放射線療法を行っても髪の毛が抜けることはありません。また、吐き気を感じたり、白血球が減少したりすることもほとんどありません。薬物療法のうち、特に化学療法(抗がん剤を使った治療)を行った場合と比べると、自覚する短期的な副作用はごく軽くてすみます。

また、放射線を体に当てているときにも、痛みや熱さによる苦痛を感じることはありません。

ただし、放射線による副作用はゼロではありません。現れる副作用は、放射線療法中と放射線療法の終了後で異なります。このうち、放射線療法の終了後の副作用は、起こる頻度が小さくなっています。

放射線療法中の副作用
(放射線を当てた部分のみに現れる)
・皮膚の変化
赤くなり、かゆみやヒリヒリした感じがある
表面がむける、水ぶくれのような状態になる
黒ずむ
・乳房全体の変化
少し腫れて、少し硬くなったり痛みを感じたりする
放射線療法の終了後、数ヶ月以降に現れる副作用 ・肺炎
咳や微熱が続く、胸の痛み、息苦しさなど
・皮膚の変化(放射線を当てた部分のみ)
汗や皮脂の分泌が減るため皮膚がかさかさする、かゆみがある
・乳房が少し小さくなる
・二次がん

「乳房部分切除術」後の放射線療法 どのように行われるの?

放射線を当てる範囲 部分切除を行った側の乳房全体
微少ながん細胞が残っている可能性があるため、全体に放射線を照射します。切除をしなかった側の乳房には放射線を照射しません。
治療期間 5週間程度(総線量45~50グレイ、1回1.8~2.0グレイ程度)
少ない量に分けて長期間照射する理由は、正常細胞への影響を小さくする一方で、がん細胞をたたくためです
1回の治療にかかる時間 10~20分程度
正確な位置に照射するため、まず位置決めを行い、その後放射線を照射します。実際に放射線が照射されている時間は数分程度です。
入院の有無 ほとんどの場合、入院はせず通院して行う
治療中は体調に注意をして、無理をしないことが大切です。放射線が体内に残ることはないので、周囲への影響はありません。

放射線の副作用を最小限にできる 「三次元原体照射」とは?

がん細胞には十分な放射線を照射する一方で、正常組織に照射される放射線の量をできるだけ少なくするための方法です。 そのために、2つの工夫が加えられています。第1の工夫は、放射線を様々な方向から照射することです。

第2の工夫は、照射する方向によって、照射する放射線の形を変えることです。理由は、照射する方向が変われば、その方向から見たがん組織の形も変わるからです。その形に合わせて放射線を照射することで、正常組織に照射される放射線の量を減らすことができます。

この2つの工夫は、CT、MRIなどの画像データを分析して最適な照射方法を割り出すと同時に、割り出した方法通りに正確な照射ができる仕組みによって支えられています。

「乳房全切除術」でも放射線療法が必要な場合があるの?

乳房をすべて切除したのに、「さらに放射線治療が必要」と診断される場合があります。 それは、しこりが大きい(5cm以上)、またはわきの下(腋窩)のリンパ節に転移がある場合です。これらの条件があてはまる場合、胸壁(胸部のうち手術を行った範囲)や周囲のリンパ節に再発するリスクが高いことがわかっています。そのため、再発を防ぐ目的で、放射線療法を行う場合があるのです。

「乳房全切除術」後に放射線療法を行う場合、その内容は、「乳房部分切除術」の後に行う放射線療法とほぼ同じです。 ただ、1点だけ違うのは、放射線を当てる範囲です。「乳房部分切除術」の後に行われる放射線療法よりも、照射範囲が広くなります。具体的には、「胸壁全体」と「首の付け根のうち鎖骨の上の部分」です。

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