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様々なステージで使用される 薬物療法

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「全身療法」の役割を果たす薬物療法

薬物療法で使用される薬剤は、全身に広がって効果を発揮するので「全身療法」と呼ばれます。がんには、発生した部分(原発巣)で増えるだけでなく、ほかの臓器や組織に移動して、そこでも増える性質があります。実際に、肺から離れた部分で肺がんが増殖した状態を「転移」と呼びます。

転移は、CTなどの画像診断では発見できない場合があるので、そうした転移を叩くために、薬剤を投与する「全身療法」が行われているのです。

一方、手術療法と放射線療法は、がん組織がある部分だけを治療するので「局所療法」と呼ばれています。手術療法はがんを切除することで、放射線療法はがんを放射線で叩くことでがんを体内から完全に取り除くことを目指します。

肺がんの治療は、治療成績をあげるために「局所療法」と「全身療法」を組み合わせて行います。

3種類の薬物療法 どのように使い分けられているの?

肺がんの薬物療法には、「細胞障害性抗がん薬」を使用する「化学療法」のほかに、「分子標的薬」を使用する「分子標的治療」、「免疫チェックポイント阻害薬」を使用する「免疫療法」があります。

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化学療法

化学療法は従来からあった治療で、「細胞障害性抗がん薬」と呼ばれる薬剤を使用します。この薬剤は、文字通りがん細胞に障害を与えることでがん細胞を死滅させ、増殖を抑える作用があります。

① 「抗がん剤」ではなく「細胞障害性抗がん薬」という名称を使用する理由

「細胞障害性抗がん薬」は、一般的には「抗がん剤」と呼ばれることがあります。しかし、「抗がん剤」という言葉の意味は“抗がん作用がある薬”なので、「細胞障害性抗がん薬」だけでなく、「分子標的治療薬」と「免疫チェックポイント阻害薬」も「抗がん剤」のカテゴリーに入ります。

そこで、このコンテンツでは、混乱を避けるために化学療法で使用される薬剤を「細胞障害性抗がん薬」と呼びたいと思います。

なお、コンテンツ内の一部では「抗がん剤」という言葉も使用する場合があります。「抗がん剤」という言葉を使用するのは、「細胞障害性抗がん薬」「分子標的治療薬」「免疫チェックポイント阻害薬」を合わせた「抗がん作用がある薬剤」を指す場合だけです。

なお、コンテンツ内の一部では「抗がん剤」という言葉も使用する場合があります。「抗がん剤」という言葉を使用するのは、「細胞障害性抗がん薬」「分子標的治療薬」「免疫チェックポイント阻害薬」を合わせた「抗がん作用がある薬剤」を指す場合だけです[


細胞障害性抗がん薬については、化学療法とも呼ばれることを追記しても良いと思います

② 副作用はコントールが可能に

「細胞障害性抗がん薬」は正常な細胞にも障害を与えるため、患者さんにとって好ましくない「副作用」が現れます。しかし最近では、「嘔吐」や「吐き気」などの副作用をコントロールする薬が開発され、入院せずに外来で治療できるケースも増えています。

③ 化学療法は2つのパターンで行われる

肺がんに対する化学療法は手術と合わせて行われる場合と、単独で行われる場合があります。

1.手術と組み合わせて行われる化学療法

●術後補助化学療法(手術後に実施)
手術で切除した部分以外の場所に残っている可能性があるがんを死滅させることで、再発や転移のリスクを低減させます。

●術前化学療法(手術前に実施)
術後補助化学療法と同様、手術単独よりも再発や転移のリスクを低減することが期待できます。術前に、化学療法と合わせて放射線療法を行う「化学放射線療法」を行う場合もあります。
ただし一部のがんの状態を除けば、術前化学療法は標準治療として勧められるだけ根拠がそろっていません。実施にあたっては医師とよく相談する必要があります。

2.手術なしで化学療法のみを実施

がんが全身に広がっている、または、肺機能の低下など全身の状態が悪いために手術ができない患者さんに対して行います。肺がんの完治ではなく、延命やQOLの向上を目指します。

分子標的治療

がん細胞の発生や増殖には、細胞内の遺伝子の異常が影響していることがわかっています。このような影響がある遺伝子は「ドライバー遺伝子」と呼ばれています。この「ドライバー遺伝子」の作用のコントロールを目指して行われるのが「分子標的治療」です。

分子標的治療で使用される「分子標的治療薬」は、異常がある「ドライバー遺伝子」の働きを阻害したり、コントロールしたりすることを目的に開発されました。「ドライバー遺伝子」という特定の標的に対して分子レベルで働く薬なので、「分子標的治療薬」と呼ばれています。

免疫療法

私たちの体には、体内に侵入した異物やがん細胞を排除する「免疫」という働きがあります。この働きを利用して、がんの治療を目指すのが「免疫療法」です。

手術療法や放射線療法を行えない段階まで進行した肺がんの患者さんのうち、免疫療法の効果があるとされているタイプでは、免疫療法によって途中で治療を休止しても5年以上生存しているケースも出ています。

免疫の働きを担っている「免疫細胞」のひとつである「T細胞」は、がん細胞を攻撃して体内から排除する役割を果たしています。しかし、この攻撃力が強くなりすぎると正常な細胞も傷つけてしまうので、攻撃力を制御する「免疫チェックポイント」という仕組みが備わっています。がん細胞は、この「免疫チェックポイント」を悪用することで、T細胞の攻撃から逃れる場合があるのです。

肺がんの免疫療法で使用される「免疫チェックポイント阻害薬」には、がん細胞が「免疫チェックポイント」のスイッチを入れるのを阻止する働きがあります。そのためT細胞の攻撃力が抑制されず、がん細胞を排除することができるのです。

監修医師

小島 史嗣 Fumitsugu Kojima

聖路加国際病院
専門分野:呼吸器外科

専門医・認定医:
日本外科学会 専門医、日本呼吸器外科学会 専門医・認定ロボット手術プロクター、日本がん治療学会 認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


後藤 悌 Yasushi Goto

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
専門分野:臨床腫瘍学

専門医・認定医:
日本内科学会認定内科医 総合内科専門医 指導医、日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 指導医、日本がん治療認定機構 がん治療認定医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医 指導医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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