LA Butterfly

子宮頸がんって、どんな病気なの?

–>

子宮頸がんは、子宮頸部にできるがんです。

「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」は子宮の入口に近い部分で、その奥に「子宮体部(しきゅうたいぶ)」と呼ばれる部分があります。このように子宮は大きく2つの部分に分けられているのですが、そのうち子宮頸部にできたがんを「子宮頸がん」、子宮体部にできたがんを「子宮体がん」と呼びます。同じ子宮から発生したにもかかわらず、「子宮頸がん」と「子宮体がん」を区別するのはなぜでしょうか? それは、がんのタイプが全く異なるため、子宮頸がんと子宮体がんでは治療法も異なるからです。

子宮頸がんなのか、それとも子宮体がんなのか、診断の区別が難しい場合もありますが、基本的には、どちらかの病名に分類した上で治療を行います。

子宮頸がんの死亡者が増加 若い方が発症するケースが増えている

人口10万人あたり、何名の方が子宮頸がんで亡くなったかについて、1975年から2017年のデータを調べてみると、増加傾向にあることがわかります。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』

次に年齢別の罹患率を調べてみると、1985年は年齢が高くなるほど罹患率が高いという傾向がありました。ところが2008年と2018年では40~44歳がピークになっています。また、それよりも若い世代でも1985年と比較すると罹患数が増えています。このように若い世代で患者さんの数が増えているのです。

なお、罹患率とは、1年の間に、人口10万人のうち何名の方がその病気になったかを示す数値です。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』

子宮頸がんの症状 無症状の場合も多いので検診が重要

早期の子宮頸がんの症状として多いのは、不正出血と性交時出血です。気になる症状がある場合は、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。

一方、症状があまりない子宮頸がんも多くあります。それに加えて、子宮頸がんは「前がん病変」の段階で治療を行うことで子宮全体を摘出する治療を受けなくても済むかもしれないため、子宮頸がんの検診を受けることがとても大切です。

実際、子宮頸がん検診を行うことで、子宮頚がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減らせることがわかっています。子宮頸がん検診の詳しい情報は、「子宮頸がんの検査子宮頸がん検診から確定診断のための検査まで」をご覧ください。

そのほかにも、例えば陰部のかゆみなどの症状があって婦人科を受診する際、不正出血などの気になる症状がある場合は、医師に、そのことも伝えましょう。医師が「詳しい検査が必要」と判断した場合は、必ず検査を受けるようにしましょう。

進行がんの場合は、腰痛や下腹痛、倦怠感などの症状が出ることがありますが、早期がんに比べると特徴的な症状はあまりありません。そういう意味でも、検診を受けることが非常に大切です。

●早期に現れる主な症状
不正出血、性交時出血(症状がない場合も多い)
●進行がんで現れる主な症状
不正出血、腰痛、下腹痛、倦怠感など(早期の場合とは異なり、特徴的な症状がない)

Q. 子宮頸がん検診の結果は「異常なし」でした。安心してよいでしょうか?

A. 検診は、がんの可能性がある患者さんを発見する割合を100%にするべく努力が続けられています。しかし、残念ながら発見される割合は100%ではありません。検診では見つけにくいタイプの子宮頸がんもあるため、「異常なし。数年後の受診をすすめます」という判定の場合でも、「次回の検診まで安心」と言い切ることはできません。また、検診のときに「前がん病変」が見つからなかった場合でも、がん化するスピードが早いタイプの子宮頸がんもあります。

検診で「異常なし」という判定だった場合でも、不正出血や性交時出血が続くときには必ず婦人科を受診することが大切です。

子宮頸がんの「生存率」
「生存率」の前提を理解した上で活用しよう

子宮頸がんの患者さんの生存率として、よく使用されるのは「5年相対生存率」という指標です。この指標は、治療を受けた後、5年後の時点で生存している方の割合を示しています。この数値は様々な前提をもとに算出されているので、それを理解した上で活用するとよいでしょう。

1) 数値は、過去の治療の成果を反映している

「5年相対生存率」は、5年以上前に治療を受けた患者さんに対して、その後の状況を追跡して算出されます。子宮頸がんの治療は日々進化していますが、現在の治療成果が反映された「5年相対生存率」が算出されるのは、5年以上先のことになります。

2) 子宮頸がんの進行段階を示す「ステージ(病期)」によっても値は異なる

ステージが小さいほど(初期の子宮頸がんであるほど)、「5年相対生存率」の数値は良くなります。目にした数値が、子宮頸がん全体のものか、それとも、ステージ毎に算出されているのかを確認することが大切です。

3) 様々な年齢や健康状態の患者さんのデータから算出されている

「5年相対生存率」は、一定数の患者さんのデータをもとに算出されます。その中には、様々な年齢や健康状態の方が含まれています。

実際の数値

2010年から2011年の間に治療を受けた患者さんの5年相対生存率は以下のとおりです。患者さんの組織型など、ほかの因子によりかなり個人差があります。

出典:国立がん研究センター がん対策情報センター「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2010-2011年5年生存率集計報告書」

子宮頸がんの特徴は、「前がん病変」という段階があること

がんとは、組織を覆う「上皮」と呼ばれる部分から発生した悪性の腫瘍です。ちなみに、私たちの皮膚も上皮の仲間です。

子宮頸がんも、子宮頸部の上皮から発生します。しかし、いきなり「がん」の形で発生するのではなく、「軽度異形成」「中等度異形成」「前がん病変(高度異形成+上皮内がん)」という段階を経る場合が多いという特徴があります。

1) 軽度異形成、中等度異形成

異形成とは「異型細胞」と呼ばれる細胞が発生した段階です。「異型細胞」は、正常細胞とがん細胞の中間的な段階にある細胞です。異形成細胞の割合が増えるに従って「軽度異形成」「中等度異形成」「高度異形成」に分類されていますが、「高度異形成」の段階になると「前がん病変」と呼ばれます。

2) 前がん病変(高度異形成+上皮内がん)

異型細胞の数が増えてある一定の割合以上になった状態です。異型細胞の一部が、がん細胞に変化していることもあります。ただし、発生したがん細胞は上皮内にとどまっています。まだ子宮頸がんと呼べる状態ではないので「前がん病変」と呼ばれます。

3) 浸潤がん

「前がん病変」が進行して、がん細胞が上皮を食い破り、上皮の外側にまで広がった状態です。これを「浸潤がん」と呼びます。浸潤がんの状態になってはじめて、子宮頸がんと診断されます。

子宮頸がんを予防するためにも原因を知っておこう

1) HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が大きなリスクになる

子宮頸がんや前がん病変が見つかった患者さんの多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染していることがわかっています。

ポイントは、HPV感染は特別なことではなく、誰にでも起こりえるという事実です。性交渉の経験のある約80%の女性が、HPVに感染すると言われています。HPVは非常にありふれたウイルスなのです。そして、ほとんどのウイルスが悪さをすることなく、自然消失するとされています。

一方、消失しなかったごく一部のケースで、下図のようなプロセスを経て子宮頸がんまで進行します。ただし、子宮頸がんになるまでには数年単位の時間がかかることがわかっています。つまり子宮頸がんは早期発見、早期治療が可能だということです。

2) HPVには、子宮頸がんに進行するリスクが高い「ハイリスク型」がある

現在、100種類以上のHPVが見つかっていますが、このうち性器や粘膜に感染するものは40種類前後あると言われています。

これらのHPVのうち、感染後に子宮頸がんの発症リスクが高いウイルスを「ハイリスク型HPV」と呼びます。HPV16型や18型などが、特に子宮頸がんと関連が深いハイリスク型HPVです。ほかにも、HPV31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型などがハイリスク型HPVに分類されています。

3) 予防法

① HPVワクチン

子宮頸がんが発症した患者さんの多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染していることがわかっています。HPV感染を防ぐには、「HPVワクチン」の接種が有効だとされています。ただしHPVワクチンには治療効果がないので、HPVに感染する前に接種する必要があります。

現在、国内で承認されているHPVワクチンは「2価」「4価」「9価」の3種類があります。

●2価ワクチン:子宮頸がんに進行するリスクが高い「ハイリスク型HPV」であるHPV16型と18型の感染を予防します。

●4価ワクチン:HPV16型と18型だけでなく、良性の尖形コンジローマの原因となるHPV6型と11型を加えた4種類のウイルスの感染を予防します。

●9価ワクチン:HPV16型、18型、6型、11型に加え31型、33型、45型、52型、58型の9種類のウイルスの感染を予防します。9価ワクチンはより広範囲で予防可能であることから、先進国では9価ワクチンが主流になっています。

日本では、HPVワクチンを接種した際の副反応が社会問題になり、HPVワクチン接種の積極的推奨が取り下げられました。そのため接種率は下がり、今も低い状況です。
しかし諸外国では、HPVワクチン接種は一般的で、女性だけでなく男性にもワクチンを接種する国もあります。ワクチン接種の成果について様々な研究が行われていて、例えばワクチン接種をしている世代は、接種していない世代に比較すると、異形成や前がん病変がある人の割合が少ないという報告(*1)や、子宮頸がん健診で異常が見つかる割合が少ないという報告(*2)があります。

(*1)Palmer T, et al: Prevalence of cervical disease at age 20 after immunization with bivalent HPV vaccine at age 12-13 in Scotland: retrospective population study. BMJ 365: 1161, 2019.
(*2)Ueda Y, et al: Dynamic changes in Japan’s prevalence of abnormal findings in cervical cytology depending on birth year. Sci Rep. 8(1):5612, 2018.

ワクチンの接種を行うかどうかでお悩みの方は、以下のサイトで詳しい情報を確認することができます。実際にワクチンを接種する場合は、ワクチン接種が可能な婦人科を受診して、医師から、ワクチンの副作用について説明を聞いた上で接種されることをお勧めします。

厚生労働省作成のリーフレット「HPV ワクチンの接種を検討しているお子様と保護者の方へ」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
[上記のページ内からPDFをダウンロードできます。]

日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
このページの最後には、日本産科婦人科学会のHPVワクチンに関する考え方についても詳しく説明されています。

② コンドームの着用

HPVに感染するリスクの一部を減らすことは期待できますが、口腔や外陰部をとおしての感染については予防できません。コンドームは予期せぬ妊娠を防ぐだけでなく、性感染症の予防にも効果があるので着用は大切です。

監修医師

金尾 祐之 Hiroyuki Kanao

公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:婦人科

専門医・認定医:
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


温泉川 真由 Mayu Yunokawa

公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:腫瘍内科(主に婦人科がん)

専門医・認定医:
日本産科婦人科学会専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本細胞学会細胞診専門医、日本臨床腫瘍学会指導医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


田中 佑治 Yuji Tanaka

公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:婦人科

専門医・認定医:
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

子宮頸がんTOPへ戻る