LA Butterfly

膀胱がんの治療法

–>

膀胱がんの治療は、「手術療法」「放射線療法」「薬物療法」の3種類があり、これらを組み合わせて治療を進めます。

治療の選択は、筋層に浸潤がない「筋層非浸潤性膀胱がん(ステージ0期とⅠ期)」と、筋層に浸潤がある「筋層浸潤性膀胱がん(ステージⅡ期とⅢ期)」では、大きく異なります。さらに、ほかの臓器に転移がある「転移性膀胱がん(ステージⅣ期)」でも治療法は異なります。

「筋層非浸潤性」「筋層浸潤性」「転移性」
それぞれ、治療法はどのように違う?

筋層非浸潤性膀胱がん(ステージ0期とⅠ期)は基本的には手術をせず、薬物療法だけを行います。

筋層浸潤性膀胱がん(ステージⅡ期とⅢ期)は、膀胱を全て切除する「膀胱全摘除術」を行います。膀胱全摘除術を行うと尿を排泄する尿路が失われるので、尿路を新たに作る「尿路変更術」も合わせて行います。

転移性膀胱がん(ステージⅣ期)では、治療の中心は薬物療法です。薬物療法を行った結果、手術が可能な状態までがんの量が減少したときには、手術療法を行うことがあります。

「筋層非浸潤性膀胱がん」で、手術を行わないのはなぜ?

ステージを決定するために検査として行われるTURBTは、手術療法としての役割も果たしています。そのため、多くの「筋層非浸潤性膀胱がん」では手術を行いません。ただし、検査として行われるTURBTで採取した組織を調べた結果、膀胱内での再発リスクが高いと診断された場合、リスクを下げるために2回目のTURBTを行う場合があります。

複数の治療を組み合わせるのは治療効果を上げ、再発を防ぐため

膀胱がんの治療では、複数の治療を組み合わせる場合があります。その理由は、複数の治療を組み合わせることで効果が高まり、再発リスクを下げることができるからです。
例えば「筋層非浸潤性膀胱がん」では、検査として行うTURBTが、同時に治療の役割を果たしています。それに加えて、膀胱内に抗がん剤やBCGを注入する「膀胱内注入療法」も行うことで、再発のリスクを下げることを目指します。

3つの治療法 それぞれの特徴とは?

1) 手術療法

膀胱がんの手術療法には、膀胱鏡を使用して膀胱内の腫瘍を削り取る「TURBT」と、膀胱を全て摘出する「膀胱全摘除術」があります。

① TURBT

膀胱鏡を使用して行うので、腹部を切ることはありません。TURBTで切除するのは膀胱内の腫瘍とその周辺の組織だけです。膀胱を全て切除する「膀胱全摘除術」とは違い、膀胱を温存した形で治療を行えます。TURBTは、以下の2つのパターンで行われます。

1)ステージ決定のためのTURBT
検査によって膀胱がんと診断された場合、ステージを決めるためにTURBTを行います。このTURBTは、同時に、がんがある部分を切除する手術療法としての役割も果たしています。

2)セカンドTURBT(2回目のTURBT)
筋層非浸潤性膀胱がんの一部では、治療目的の手術療法としてTURBTが行われることがあります。ステージ決定のためのTURBTの後に、もう1度行うので「セカンドTURBT」と呼ばれています。

2) 放射線療法

放射線を照射することで、がんを縮小または消失させます。体にメスを入れる必要がないため、高齢の方や、身体の状態が悪く手術ができない方に対して行われます。

また、手術療法で膀胱を摘出することを避け、膀胱を温存するために、患者さんの希望であえて放射線療法が選択される場合があります。

ほかにも、膀胱がんが再発した場合などに、QOL(生活の質)を向上させるために行われる場合もあります。

3) 薬物療法

膀胱がん独自の方法と、膀胱がん以外のがんでも行われている一般的な方法があります。

① 膀胱がん独自の方法(膀胱内注入療法)

「筋層非浸潤性膀胱がん(ステージ0期、Ⅰ期)」の患者さんにTURBTを行った後、抗がん剤(抗がん作用がある薬剤)やBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に直接注入します。目的はTURBTで切除できなかった可能性があるがん細胞を叩くことです。

② 一般的な方法

膀胱全摘除術の前後に点滴で抗がん剤を投与して、治療効果を高めることを目指します。
ほかにも、膀胱がんが進行して手術療法や放射線療法では効果が見込めないときに行うことがあります。この場合、膀胱がんの根治(治癒を目指して治療すること)ではなく、生存期間を伸ばしQOL(生活の質)を向上させることを目指します。

3つの治療法は「局所療法」と「全身療法」に分類できる

「局所療法」は、がんがある部分(局所)だけを治療する方法です。基本的には根治を目指して行われますが、「生存期間を伸ばす」または「QOL(生活の質)の向上」のために行われる場合もあります。局所療法として行われるのは、手術療法と放射線療法です。

一方、「全身療法」は全身を治療する方法です。がんは、発生した臓器にとどまらず、付近の組織や臓器に広がっていく性質があります。そのため全身に広がった、または、広がっている可能性があるがんを叩くことができる全身療法が必要なのです。

全身療法として行われるのは薬物療法です。ただし、膀胱がんの場合、薬物療法の1つである「膀胱内注入療法」は例外で、全身療法ではなく局所療法として行われます。

膀胱がんとうまく付き合っていこう

一般的にがんの治療では、治療が完了した後、再発がないかを確認するために「経過観察」を行います。経過観察の期間中は、定期的に通院して、膀胱鏡や尿の細胞診などを行い再発がないことを確認します。
経過観察の期間は最短でも3年程度は必要になるため、「膀胱がんとうまく付き合っていく」ことが大切になります。

1) 「筋層非浸潤性膀胱がん(0期・Ⅰ期)」の場合

「筋層非浸潤性膀胱がん」では、膀胱を温存することができるのですが、その一方で、膀胱内に再発が起こるリスクが高いという特徴があります。そのため「筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ期・Ⅲ期)」で「膀胱全摘除術」を受けた場合よりも、通院の頻度が高くなります。

2) 「筋層浸潤性膀胱がん(Ⅱ期・Ⅲ期)」の場合

再発の有無だけでなく、膀胱全摘除術と同時に行った「尿路変更術」によって新たに作った尿路に問題がないかを確認します。

監修医師

堀江 重郎 Shigeo Horie

順天堂大学大学院泌尿器外科学 主任教授
順天堂大学附属順天堂医院 泌尿器科長
専門分野:泌尿器がん(前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌)の手術・薬物治療、男性更年期障害、性機能障害、性腺機能低下症、LOH症候群

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会指導医、日本腎臓学会指導医、日本癌治療学会暫定教育医、日本内視鏡外科学会腹腔鏡技術認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


北村 香介 Kousuke Kitamura

順天堂大学附属練間病院 泌尿器科 准教授
専門分野:泌尿器悪性腫瘍、ロボット手術、腹腔鏡手術、尿路性器感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器科学会 認定専門医、日本泌尿器科学会 指導医、日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡手術認定医、日本がん治療認定医機構 専門医、ロボット外科学会 国内A級認定、ロボット外科学会 国際B級認定、インテュイティブサージカル da Vinci Certificate

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


家田 健史 Takeshi Ieda

東京臨海病院 泌尿器科
専門分野:膀胱腫瘍・尿路感染症

専門医・認定医:
日本泌尿器学会専門医・指導医 日本がん治療学会認定医、Certificate of Da Vinci System Training、ぼうこう又は直腸障害の診断指定医、ICDインフェクションコントロールドクター認定、内分泌代謝科(泌尿器科)専門医、医学博士

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

膀胱がんTOPへ戻る