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胃がんの診断法

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胃がんを見つけるための検査 まずは採血と健康診断

胃がんを見つけるには、まず、採血で、ペプシノゲンの値から、胃がんになりやすいかどうかを調べることができます。さらに、健康診断では、胃透視検査(バリウム検査)胃内視鏡検査が行われています。

1.ペプシノゲン検査(ABC検診) 血液で胃がんのリスクを知る

ペプシノゲンは、胃の細胞から分泌される物質です。
胃の粘膜の炎症が慢性化して(慢性胃炎)、胃液などを分泌する組織が縮小し、胃の粘膜が萎縮した状態が萎縮性胃炎です。これが進むと胃がんのリスクが高まります。
この萎縮性胃炎が進行すると、ペプシノゲンの分泌量が減少していきます。採血でこのペプシノゲンの減少具合を調べることで、胃がんが生じるリスク分類をすることができます(ABC検診)。
リスクが高い場合には胃透視検査(バリウム検査)、胃内視鏡検査がすすめられます。

・胃がんのリスク分類(ABC分類)

A群:健康的な胃粘膜で、胃がんが発生する確率はほぼゼロとされています。
B群:胃粘膜の萎縮は軽度で、年間胃がん発生率は0.1%(1000人に1人)
C群:萎縮が進み、年間胃がん発生率は約0.2%(500人に1人)
D群:萎縮が高度に進み、ピロリ菌が住めず、年間胃がん発生率は約1.25%(80人に1人)

2.胃透視検査(バリウム検査) 胃全体をとらえる検査

バリウムをのみこんで胃をふくらませることで、胃の形や粘膜の状態をレントゲンで確認する検査です。胃全体の形をとらえることができ、胃がんの局在診断に優れた方法です。

バリウムは小さながんを見つけるのは苦手

胃がん検診でよく行われていますが、小さながんをみつけることが苦手です。この検査であやしい陰影があった場合には、内視鏡検査を行います。

3.胃内視鏡検査 胃カメラで確定診断する

これは、上部消化管内視鏡(胃カメラ)で胃の内部を観察して、がんが疑われる部分があるかないかを調べる検査です。腫瘍だけではなく、萎縮性胃炎の状態も把握することができます。

検査の侵襲、つまり患者さんの身体的負担やコストはバリウム検査よりも大きいですが、早期がんにも診断精度が高い方法です。がんを疑う部位から組織を採取し、病理検査で診断を確定することが可能です。

胃がんワンポイント

病理検査って?

採取した組織を顕微鏡で観察して、がんの有無、がんの形態や性質をくわしく判定します。胃にできる悪性腫瘍の大半は、胃の粘膜の腺上皮ががん化した、腺がんと呼ばれるものですが、まれにリンパ腫や神経内分泌腫瘍のこともあります。そういった違いを病理検査で調べます。

・胃がんのステージを決める検査

1. CT検査 X線で広がりを調べる

X線で体の内部の断面を撮影する検査です。胃がんは、離れた別の臓器(肝臓・肺・腹膜など)やリンパ節にとび(転移)、また、近くの臓器に広がること(浸潤)があります。CT検査は、このようながんの広がりの程度を調べるのに適した検査です。

2. MRI検査 磁気で肝転移を調べる

CTと同様に体の内部の断面を撮影する検査ですが、X線ではなく磁気を使った検査なので、放射線被曝がありません。おもに肝臓への転移の程度を調べるのに力を発揮します。

3. PET検査 ブドウ糖で広がりを調べる

CTやMRIでリンパ節転移、遠隔転移が疑われた症例に用いる検査です。やり方は、放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射して、がん細胞に取り込まれるブドウ糖の分布を撮影することで、がんの広がりを調べます。

4. 超音波内視鏡検査 深さや転移を調べる

内視鏡と超音波検査装置を組み合わせたものです。がんの深さをより詳しく見たり、胃の周囲の臓器やリンパ節への転移を調べたりします。

5. 審査腹腔鏡 おなかの中を観察する

腹膜転移(播種)が疑わしいと判断された進行胃がんで、腹腔鏡によっておなかの中(腹腔内)を観察する検査です。全身麻酔下で行うため、入院して行います。
腹部に小さな穴をあけてカメラや鉗子を挿入し、おなかの中にがんが散らばっていないかを観察します。がんが疑われる部分が見つかった場合は、そこから組織を採取し、腹腔内を洗浄した液を採取して、がん細胞が混じっていないかを病理検査で調べます。
CTなどの画像検査ではっきり腹膜転移の診断がつかなかったときでも、審査腹腔鏡で診断がつくことがあります。

6. 腫瘍マーカー検査 健保のがん検診ではできない

腫瘍マーカーは、がんが存在することで生じる物質で、採血で測定することができます。胃がんでは、CEAやCA19-9が腫瘍マーカーとして用いられ、これらが高値だと、がんの存在を疑うきっかけになります。ただし、がんがあっても腫瘍マーカーの値があがらないこともあり、がんがなくても上昇することがあります。この検査は、検診目的の場合は健康保険ではできず自費診療で行うことができます。

胃がんのステージ 進行度を決める

これらの検査により、がんの深さ(T)、リンパ節への広がり(N)、もっと遠くへの転移(M)がわかります。これらの3項目をもとに、胃がんのステージ(進行度)が決まります。

がんの3項目 深さとリンパ節から遠い転移

T (tumor) :がんの深達度(胃壁にどこまで深く浸潤しているか)
N (node) :リンパ節転移の数
M (metastasis) :遠隔臓器(肝臓や肺)への転移や腹膜播種(腹腔内に散らばった状態)があるかないか

1. がんの深達度(T)

T1a:粘膜内に限局している
T1b:粘膜下層に達している
T2:筋層に達している
T3:筋層を超えて漿膜(一番外側の膜)の手前に達している
T4a:漿膜を超えて胃の表面に出ている
T4b:胃の表面に出て他の臓器(膵臓や肝臓など)に広がっている(浸潤)

2. リンパ節転移の数(N)

N0:リンパ節転移なし
N1:領域リンパ節(胃の近くにあるリンパ節)の1~2個に転移
N2:領域リンパ節の3~6個に転移
N3a:領域リンパ節の7~15個に転移
N3b:領域リンパ節の16個以上に転移

3. 遠隔転移の有無(M)

M0:下記の転移や播種がない
M1:肺や肝臓など他の臓器や領域外のリンパ節に転移している、腹膜播種がある

「胃癌取り扱い規約(第15版)」に準拠

臨床ステージと病理ステージ 術前と術後

これらの3項目をもとに、ステージ(進行度)が決まります。画像検査を含む臨床所見から決まる「臨床ステージ」と、手術で切除した標本を病理検査で詳しく評価し決定する「病理ステージ」の2つがあります。

1) 臨床ステージ(手術前のステージ):最初の治療方針を決める

「胃癌取り扱い規約(第15版)」に準拠

2) 病理ステージ(手術後に確定したステージ):手術後の治療を決める

「胃癌取り扱い規約(第15版)」に準拠

監修医師

春田 周宇介 Haruta Shusuke

虎の門病院
専門分野:消化器外科(上部消化管)

専門医・認定医:
日本外科学会 専門医・指導医、日本消化器外科学会 専門医・指導医、日本内視鏡外科学会 技術認定医(胃)、日本消化器病学会 専門医など

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


浦辺 雅之 Masayuki Urabe

虎の門病院
専門分野:消化器外科

専門医・認定医:
外科学会専門医、消化器外科学会専門医、消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、食道学会食道科認定医、がん治療認定医機構がん治療認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


小川 雄介 Yusuke Ogawa

虎の門病院
専門分野:一般外科、消化器外科

専門医・認定医:
日本外科学会外科専門医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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