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放射線療法

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放射線療法は、がんがある部分だけを治療する「局所療法」のひとつです。同じ「局所療法」である手術療法と比べると、放射線療法は体にメスを入れずに治療できます。

子宮頸がんの場合、「放射線療法が効きやすい」という特徴があります。そのためステージ(病期)Ⅲ期やⅣA期の患者さんでは、放射線療法を主治療として、同時に化学療法も行う「同時化学放射線療法(CCRT)」が標準治療になっています。ここでの化学療法は「増感剤」といって、放射線療法の効果を高める目的で投与されます。ただしⅢ期やⅣA期では腎機能が低下している場合も多く、化学療法が省略される場合もあります。

一方、同じⅣ期でも、子宮頸部以外の臓器に転移がある(ⅣB期)の場合、治療の中心は薬物療法になります。

子宮頸がんでは放射線療法は、どのような場合に行われる?

子宮頸がんの放射線療法は、次の4つの場合に行われます。

1) Ⅰ期・Ⅱ期の主治療(手術を行うことが難しい場合も含む)

ステージがⅠ期とⅡ期では、「手術療法」または「同時化学放射線療法」が標準治療となっています。しかし高齢である、持病があるなどの理由で手術を行うことが難しい場合やⅡB期などでは「同時化学放射線療法」や「放射線療法」を行うことがあります。

2) Ⅰ期・Ⅱ期の術後補助療法

Ⅰ期とⅡ期で手術療法を行った後には再発リスクの評価を行い、再発リスクが高い場合には術後補助療法をおこないます。再発リスクが「高リスク群」の患者さんは「同時化学放射線療法」を行います。

3) Ⅲ期・ⅣA期の主治療

手術でがんを取り切ると、体に与えるダメージが大きすぎる場合(Ⅲ期、ⅣA期など)に、手術の代わりに主治療として同時化学放射線療法が行われます。

4) 症状の緩和

子宮頸がんが骨などに転移した場合や、ⅣB期で出血症状がある場合など、症状を和らげるために骨や子宮などに放射線療法が行われることがあります。

5) 再発治療

再発した部分に対して放射線療法が行われることがあります。

放射線療法はどのように行われるの?

1) 治療方針決定

婦人科医と放射線療法を担当する放射線科の医師が患者さんを診察し、画像検査や血液検査などの情報と、子宮頸がんのステージや全身の状態も合わせて治療方針を決め、患者さんと相談して同意が得られたところで治療がスタートします。

2) 治療計画用のCT撮影

「治療計画」とは、どの方向から、どのくらいの線量の放射線を照射するかを決めることです。そのためには、がんと正常な組織の位置を正確に把握する必要があるので、CT撮影を行います。また、放射線治療の際の目印にするため、皮膚に印をつけます。
ほかにも、放射線療法を行う際に体を固定するための固定具を作成することがあります。

3) 治療計画決定

撮影したCT画像を元に、専用のコンピューターを使って治療計画を立てます。がんがある部分に十分な量の放射線が照射可能で、逆に、正常な組織や臓器に当たる放射線が基準内に収まるように計画を決定します。

4) 放射線照射

放射線治療の体位をとっていただいた後、がんの位置を確認するために画像撮影を行い、誤差を補正した後、照射を開始します。実際に放射線が照射される時間は数分ですが、着替えや準備を含めて10~20分ほどかかります。

5) 経過観察

治療の結果だけでなく、副作用の有無も確認します。放射線療法による副作用は、治療後数ヶ月から数年後に現れることもあるため、定期的な診察が必要です。

放射線療法のスケジュール

放射線療法は、分割して行われます。たとえば術後補助療法として行われる「同時化学放射線療法」では、抗がん剤の投与を毎週1回、放射線治療を週に5回行うことが多く、これを6週間程度続けます。放射線を分割して照射することで、照射した範囲にあるがん細胞を減少させながらも、同じ範囲内の正常細胞へのダメージを抑えることができます。

●放射線が、がんの治療に効果を発揮するのはなぜ?
放射線には、「電離作用」と呼ばれる性質があります。この「電離作用」によってがん細胞のDNAが破壊され、がん細胞が死滅します。

放射線療法の副作用

放射線療法による副作用には、治療直後に起こるものと、しばらくたってから起こるものがあります。

1) 治療直後の副作用

頻度が高い副作用としては、下痢、吐き気や嘔吐、体のだるさ、放射線皮膚炎(皮膚が日焼けのような状態になる)などがあります。

2) 治療後しばらくたってから現れる副作用

頻度が高い副作用としては、卵巣機能低下による更年期障害があります。それ以外にも直腸炎・直腸出血、膀胱炎・出血性膀胱炎、骨盤不全骨折(骨盤の骨が弱くなる・脆弱化する)、下腹部の皮膚が硬くなる、リンパ浮腫(足や下腹部がむくむ)、腸閉塞などが起こる場合があります。

監修医師

金尾 祐之 Hiroyuki Kanao

公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:婦人科

専門医・認定医:
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


温泉川 真由 Mayu Yunokawa

公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:腫瘍内科(主に婦人科がん)

専門医・認定医:
日本産科婦人科学会専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本細胞学会細胞診専門医、日本臨床腫瘍学会指導医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


田中 佑治 Yuji Tanaka

公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:婦人科

専門医・認定医:
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


熊井 康子 Yasuko Kumai

公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:放射線治療

専門医・認定医:
日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医、日本医学放射線学会放射線科専門医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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