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子宮体がんの検査 ~検診・婦人科受診から「確定診断」までの流れ~

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不正出血などの症状があって婦人科を受診すると、問診と内診を行います。 加えて、子宮体部の内膜の細胞を採取して、その細胞を詳しく調べる「細胞診検査」を行います。 この際、同時に子宮頸がんの検査も行われる場合があります。
一方、「子宮体がん検診」の場合は問診、内診、細胞診検査が行われます。

細胞診検査を行って、「陽性」または「擬陽性」の結果が出た場合、さらに詳しく調べるために「精密検査」を行う必要があります。 「精密検査」では、子宮体部の内膜組織を採取して調べる「組織診検査」が行われます。

組織診検査の結果、子宮内膜増殖症や子宮体がんが見つかった場合、がんの広がりや転移の有無を確認するために画像診断を行います。 その結果と、組織検査の結果を合わせて「診断」となります。 このとき、治療方針を決めるために必要な情報である「組織型」と「ステージ(病期)」も決まります。 「組織型」と「ステージ(病期)」は、「 治療選択の3つのポイント 」で詳しく説明します。

「細胞診検査」と「組織診検査」
2つの検査はどこが違うの?

「細胞診検査」は、子宮内膜の細胞を採取して顕微鏡で調べる検査です。 子宮内膜の細胞は、ブラシを使って子宮内膜をこするだけで採取できます。 比較的簡単に採取できることに加え、痛みも少ないので、子宮体がん検診や、不正出血で婦人科を受診した場合に行われます。

一方「組織診検査」は、子宮内膜の組織(細胞のかたまり)を採取して、それを顕微鏡で調べる検査です。 組織を採取し、がん細胞の浸潤の深さや異形度を調べて、がんの悪性度を評価します。 「細胞診検査」よりも痛みが強いため、「細胞診検査」で「陽性」または「擬陽性」と診断された方に対して、精密検査として行われます。

「細胞診検査」の目的と検査の内容

子宮体がんの「細胞診検査」は、子宮内膜の細胞に異常がないかを確認するために行われます。 「細胞診検査」では、まず子宮内膜(子宮体部の内側を覆う膜)の細胞を採取します。これを「細胞診」と呼びます。

採取された細胞は、外部の検査機関や病院内の細胞検査室に運ばれ、顕微鏡を使って詳しく観察されます。 目的は、異型細胞やがん細胞がないかを確認することです。観察の結果を踏まえ、最終的に病理医と呼ばれる医師が診断を下します。
なお、子宮体がんの「細胞診検査」を行う際、医師の判断で子宮頸がんの検査も同時に行う場合があります。

細胞診で細胞を採取する方法は、擦過法が主に行われます。

[擦過法]

子宮内膜を軽くこすって細胞を採取する方法です。 細い棒状の器具を、子宮内部に挿入します、棒状の器具の中には先端にブラシがついている器具が収納されています。 これを回転させて、子宮内膜をこすることで、子宮内膜の細胞を採取します。

子宮体がん検診は、子宮の奥にある子宮内膜の細胞を採取します。 子宮内膜が見えない状態で採取するので、肉眼的に確認できる子宮頸がん検診と比べると、うまく採取できなかったり、異常がある部分まで届かなかったりする場合があります。 そのため、感度と特異度の両方が低くなるので、子宮体がん検診で細胞診検査が陰性でも(問題なくても)、出血が持続する場合は、再検査や組織診検査をすることが大切です。

 

「感度」「特異度」って、どういう意味?

  • 感度:がんが“ある”人を「陽性(問題あり)」と判定する割合
    →感度が低いほど、陽性の人を見つけられる確率が低い
  • 特異度:がんでは“ない”人を「陰性(問題なし)」と判定する割合
    →特異度が低いほど、陰性の人を誤って陽性と判定する確率が高い

 

Q. 細胞診検査は痛くないの?

A. 患者さんの負担を減らすため、子宮体部に挿入する器具は細くなっています。
ただ子宮の奥まで器具を挿入し、細胞を採取する必要があるので、多少の痛みがあります。
基本的には耐えることが難しいような強い痛みはありませんが、痛みが強いと感じる場合は、遠慮せずに医師に伝えましょう。 痛みで採取が困難な場合や子宮口が狭窄・閉鎖している場合は、全身麻酔下に行うこともあります。

1) 子宮体がんの有無を確認する「細胞診検査」では子宮頸がんの確認のための「細胞診検査」も行われる場合がある

「子宮体がん」と「子宮頸がん」は、発生する部分が違うだけでなく、その性質にも大きな違いがあります。 しかし、2つのがんの初期の自覚症状は、どちらとも「不正出血」です。 このため、医師の判断で、子宮体がんの有無を確認するための「細胞診検査」と同時に、子宮頸がんを確認するための「細胞診検査」が行われる場合があります。

 

子宮頸がんを確認するための「細胞診検査」とは?

腟内に器具を挿入して、ブラシを使い、子宮の入り口部分にあたる「子宮頸部」の表面を軽くこすります。 このとき、痛みはほとんどありません。ブラシを使って採取された細胞は、子宮体がんの「細胞診検査」と同様、検査機関や院内の細胞検査室に運ばれ、詳しく調べられます。

2) 高齢者の方は「細胞診検査」の代わりに「超音波検査」が行われる場合がある

高齢の方の場合、細胞を採取する器具を子宮の中まで挿入することが難しい場合があります。 このような場合、代わりに「経腟超音波検査」を行うことがあります。

「経腟超音波検査」を行うと、子宮内膜の厚さを測定できます。 子宮体がんになると子宮内膜が厚くなる場合が多いので、「経腟超音波検査」で子宮内膜の厚さを確認することで、子宮体がんがあるかどうかを判断できます。

ただし、超音波検査だけだと初期のがんを検出できない可能性があります。 「経膣超音波検査」に比較すると、「細胞診検査」の方が子宮内膜の状態を正確に把握できます。 このため、「細胞診検査」が可能な方の場合、「経腟超音波検査」ではなく「細胞診検査」が行われます。

 

「経腟超音波検査」とは?

超音波検査は、人が音として聞き取ることができない周波数の「超音波」を使って体内の状態を確認する検査です。
経腟超音波検査では、超音波を発生する「プローブ」を腟内に挿入します。 プローブから発生される超音波の跳ね返りを画像化することによって、子宮や卵巣の状態を確認することができます。

組織診検査の目的と検査の内容

子宮体がんの「組織診検査」は、子宮内膜の組織を調べるために行われます。 「組織」とは細胞のかたまりのことです。 そのため、細胞の異常の有無だけでなく、組織の状態(がん細胞がどのくらい深く浸潤しているか)も確認できます。 「細胞診検査」よりも多くの情報が得られるので、確実な診断が可能です。

「組織診検査」では、まず子宮内膜の組織を採取します。これを「生検」と呼びます。
採取された組織は、異型細胞やがん細胞が存在していないか、また、組織の状態に異常はないかを調べるため、顕微鏡を使って詳しく観察します。 その結果を踏まえ、最終的に病理医が診断を下します。

「生検」で組織を採取する方法は、子宮内膜掻爬術、もしくは子宮内膜吸引法があります。 掻爬術は、「キュレットゾンデ」と呼ばれる、先がスプーン状になっている器具で、これを子宮腔内に挿入し、子宮内膜の組織を採取します。 吸引法は、先端に複数の小さな穴がいくつもあいているチューブを子宮内に挿入し、チューブの中にある内筒を手前に引き、チューブ内を陰圧にすることで、子宮内膜の組織を吸引して採取します。

 

吸引法

先端に、複数の小さな穴がいくつもあいているチューブを子宮内に挿入します。 チューブの中にある内筒を手前に引き、チューブ内を陰圧にすることで、子宮内膜の組織を吸引することで採取します。

 

Q. 細胞診検査は痛くないの?

A. 細胞のかたまりである組織をできる限り多く採取するため、細胞診検査よりも痛みが強くなります。 痛みを我慢できない場合は、麻酔をかけて全身麻酔下に行います。
特に、子宮内膜を全面的に採取する場合は痛みが強くなるため、麻酔をかけて行います。

がんの広がりや転移の有無を確認する「画像診断」

組織診検査の結果、前がん病変(異型細胞)や子宮体がんが見つかった場合、がんがどのくらい広がっているか、 また、ほかの臓器への転移がないかを確認するために「画像診断」が行われます。 「画像診断」に使われるのはMRI(核磁気共鳴画像)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、PET/CT(陽電子放出断層撮影)検査などです。 「組織診検査」の診断結果と「画像診断」の結果を総合的に判断することで診断と病期が決まり、治療方針も決定します。

  1. MRI(核磁気共鳴画像法)検査

    強力な磁石の力を活用した検査で、体内の断面を画像化できます。 MRI検査は質的な評価に特化しているため、骨盤内の婦人科臓器を調べる際には第一選択となります。 撮影方法を変えることによって、子宮や卵巣、周囲にある膀胱や直腸との関係や、がんの浸潤の深さ等を詳しく調べることができます。
    子宮体がんの場合、がんが子宮内のどの部分まで広がっているか、また、隣接する卵巣や卵管に広がっていないかを確認するためにMRI検査が行われます。

  2. CT(コンピュータ断層撮影)検査

    X線を使って、体内の断面を画像化する検査です。 子宮体がんの場合、周囲の臓器への浸潤・転移、リンパ節や離れた臓器に転移がないかを確認するために行われます。 骨盤の中を詳しく検査するMRI検査と違い、広範囲の臓器を評価することができます。

  3. PET(陽電子放出断層撮影)検査

    PETとは放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種です。 放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化します。 現在PET検査といえば大半がブドウ糖代謝の指標となる18F-FDGという薬を用いた”FDG-PET検査”です。 PET検査は、通常がんや炎症の病巣がわかりやすく描出されるため、子宮体がんの転移がないかを確認するために使用されます。 「1回の撮影で全身をチェックできる」という特徴があります。

    検査を行う前に「微量の放射線を出す物質」を注射します。 この物質には、「がん細胞に多く集まる」という性質があります。 そのため、がん細胞がある部分から出る放射線量は、がん細胞がない部分よりも多くなります。 ただし、がん細胞だけではなく。炎症の病巣も放射線量が多くなるため、患者さんの病状や症状により判断する必要があります。 PET検査は、放射線量が多い部分を可視化できるので、転移があるかどうかを容易に確認することができます。 CTでわからなかった部位や、転移かどうか判断つかない部位の評価ができます。

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