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子宮体がんは、子宮体部(しきゅうたいぶ)にできるがんです。
子宮は、「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」と「子宮体部」の2つに分けられます。子宮頸部は子宮の入口に近い部分で、その奥に子宮体部があります。2つの部分のうち子宮体部にできたがんを「子宮体がん」、子宮頸部にできたがんを「子宮頸がん」と呼びます。
このように同じ子宮から発生したにもかかわらず、「子宮体がん」と「子宮頸がん」を区別するのは、なぜでしょう?
理由は、がんの発生母地(発生する場所)と機序(仕組み)がまったく違うため、子宮体がんと子宮頸がんとでは異なる治療を行う必要があるからです。
子宮体がんは、子宮体部の内側を覆っている「子宮内膜(ないまく)」にある細胞から発生します。このため、子宮体がんは「子宮内膜がん」とも呼ばれます。
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子宮体がんの患者さんが増えている
子宮体がんの罹患数(1年間のうちに病気になった人の数)は年々増えています。
子宮にできる2つのがんである「子宮体がん」と「子宮頸がん」の罹患数を比べると、以前は子宮頸がんの方が、数が多い状態でした。ところが2010年前後に逆転して、それ以降は、子宮体がんの方が、罹患数が多くなっています。
子宮体がんについて、この30年間の罹患数の推移を見ると、5.6倍に増加しています(1985年:2636人、2015年:14909人)。また2002年と2018年の罹患数を比べると、約2倍に増えています。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
次に、罹患数を年代別に見てみると、40歳代から急激に増加、50歳代と60歳代でピークを迎え、それ以上の年代では減少しています。
子宮体がんが40歳未満に発症した場合、「若年子宮体がん」と呼ばれます。「若年子宮体がん」は、以前は比較的まれな病気でしたが、最近は増加の傾向にあります。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
子宮体がんの罹患数の増加にともない、子宮体がんで亡くなる方の数も増えています。 2002年に子宮体がんで亡くなった方の数は約1300人でしたが、2018年には約2600人で、約2倍に増えています。
死亡された方を年齢別に見てみると、年齢別の罹患数とは違う傾向があります。 すでに紹介したように、罹患数は50~60歳代がピークですが、亡くなった方の数は、年齢が高いほど多い傾向があります。
このように、子宮体がんは年齢が高い方にとっても注意が必要な病気だと言えます。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
子宮体がんの症状 不正出血には注意が必要
初期の子宮体がんの主な自覚症状は「不正出血」です。月経ではないのに出血がある場合や、閉経したのに出血がある場合は注意が必要です。 また、不正出血がない場合でも、子宮口(子宮の出入り口)が閉じている場合は、血液が子宮の内部にたまり、下腹部痛が出ることもあります。
子宮体がんが進行すると、膿や血液の混じったおりもの、下腹部痛、腹部膨満感、排尿時の痛みや排尿困難、性交痛、腰痛、下肢のむくみなどの症状が現れます。 このような症状が続く場合には、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。
- 早期に現れる主な症状
不正出血、下腹部痛など - 進行がんで現れる主な症状
膿や血液の混じったおりもの、下腹部痛、腹部膨満感、排尿時の痛み・排尿困難、性交痛、腰痛、下肢のむくみなど
Q. 子宮がん検診を受けたところ、「異常なし」という結果でした。子宮体がんの心配もないと考えてよいでしょうか?
A. 自治体や職場で行われる「子宮がん検診」では、一般的には「子宮頸がん」の検査だけが行われ、「子宮体がん」の検査は行われません。 そのため、自治体や職場で実施される「子宮がん検診」を受診して、「異常なし」という結果だったとしても、「子宮体がんの心配はない」ということにはなりません。
ただし、自治体や職場で行われる「子宮がん検診」でも、不正出血がある場合には、子宮体がんの検査も検討されます。 「子宮がん検診」では、問診票の記入があるので、不正出血があった場合には、必ずそのことも記入しましょう。
不正出血は、「子宮体がん」だけでなく「子宮頸がん」でも現れる症状です。不正出血があった場合は、検診まで待つのではなく、できるだけ早く婦人科を受診することをおすすめします。
「子宮体がん」の原因は?
子宮体がんは、発生する原因の違いによって「タイプ1」と「タイプ2」の2つに分類されています。
- タイプ1:エストロゲンの影響で発生する(エストロゲン依存性)
- タイプ2:エストロゲンとは無関係に発生する
「タイプ1」の子宮体がんは、女性ホルモンの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が深く関与しています。 正確には、「エストロゲン」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つの女性ホルモンのバランスが崩れ、エストロゲンの影響が大きくなると子宮体がんが発生しやすくなると言われています。 このような性質があるため、「タイプ1」の子宮体がんは「エストロゲン依存性」と呼ばれます。
「タイプ1」と「タイプ2」の患者さんの数を比べると、「タイプ1」の方が多くなっています。「タイプ1」の子宮体がんは、体内のエストロゲンの影響が大きい状態が続くと発症のリスクが高まるため、以下のような場合、発症しやすくなります。
- 肥満
→脂肪細胞からエストロゲンが放出されるためリスクが高くなる - 妊娠・出産経験がない、または少ない。閉経が遅い。
→月経の回数が多くなるため、エストロゲンの影響を強く受ける - 月経不順や不妊などのホルモンバランス異常
ほかにも、エストロゲンが関係しない危険因子として、以下のものがあります。
- 高脂血症
- 高血圧、糖尿病
- 前がん病変(子宮内膜異型増殖症)
出典:がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2010-2011年5年生存率集計 報告書