肺がんの「がん遺伝子パネル検査」が、2019年から保健適用となりました。「がん遺伝子パネル検査」は、がんの組織を使って、多数の遺伝子を同時に調べることができる検査です。仮に遺伝子の異常が発見された場合、その遺伝子異常に対処する薬が見つかれば、その薬を使った治療の可能性が開けます(ただし制限があります。詳しくは14-2をご参照ください)。
現在、「がん遺伝子パネル検査」には、「NCC オンコパネル」「F1CDx」「オンコマイン DxTT」の3種類がありますが、ここでは「NCC オンコパネル」「F1CDx」について説明します。「オンコマイン DxTT」は検査の目的や性質が異なるため、以下の記述どおりではない部分があります。詳しくは主治医の先生にご確認ください。
「がん遺伝子パネル検査」と従来の遺伝子検査の違い
これまでも、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を投薬できるかを確認するため、特定の遺伝子を対象とした検査が行われていました。これを「コンパニオン診断」と呼びます。この「コンパニオン診断」と、新たに保険適用になった「がん遺伝子パネル検査」には次のような違いがあります。
●コンパニオン診断
がんの増殖に関係する特定の遺伝子を1個だけ検査して、異常の有無を確認する。
●がん遺伝子パネル検査
複数の遺伝子の異常を同時に確認できる。「ドライバー遺伝子」の異常の有無も確認できるので、コンパニオン診断の役割も果たす。
がん遺伝子パネル検査で遺伝子の異常が見つかった場合
「がん遺伝子パネル検査」を行って遺伝子の異常が見つかり、その異常に対処できる薬が存在する場合でも、その薬が保険適用外であるケースも多いことが想定されます。その際には、臨床試験などの実施の検討が必要です。
また、治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異が見つかるのは全体の約半数。臨床試験を含む投薬が可能な人は全体の10%程度とされています。
「がん遺伝子パネル検査」を行うと、肺がんの治療に役立つデータとは別に、がんになりやすい遺伝性の遺伝子が発見される場合があります。このような結果が出た場合でも、「その結果を聞かない」という選択肢があります。また結果を聞く場合には、十分な理解ができるようなサポートを受けられます。
「がん遺伝子パネル検査」を受けられる条件
がんが進行して転移があり、標準治療が終了した(終了見込みを含む)患者さんで、新たな薬物療法を希望する場合に検討が行われます。そのほかにも、「全身状態が良好であること」などの条件があります。
検査の流れ
申し込み→がん遺伝子パネル検査→検査結果→治療方針決定
検査で得られたデータは、複数の専門家で構成される委員会によって検討され、その結果が担当医に送られます。担当医は、その結果を参考に治療方針を決定します。
肺がんワンポイント
がん遺伝子パネル検査を受けられる医療機関
「がんゲノム医療中核拠点病院」や「がんゲノム医療連携病院」などで受けられます。
「がんゲノム医療中核拠点病院」は、遺伝子解析を行うと同時に専門の人材を育成する役割を担う施設です。一方「がんゲノム医療連携病院」では、「がんゲノム医療中核拠点病院」と連携しながら「がん遺伝子パネル検査」を実施します。
監修医師
小島 史嗣 Fumitsugu Kojima
聖路加国際病院
専門分野:呼吸器外科
専門医・認定医:
日本外科学会 専門医、日本呼吸器外科学会 専門医・認定ロボット手術プロクター、日本がん治療学会 認定医
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。
後藤 悌 Yasushi Goto
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
専門分野:臨床腫瘍学
専門医・認定医:
日本内科学会認定内科医 総合内科専門医 指導医、日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 指導医、日本がん治療認定機構 がん治療認定医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医 指導医
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。