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粒子線治療

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粒子線治療は、放射線療法の一種です。一般的な放射線療法ではX線が使用されますが、「粒子線治療」では粒子線が使用されます。

粒子線は従来のX線と比べて「正確な照射が可能」という性質があるため、従来のX線で治療が難しい患者さんの治療に活用できるのではないかという意見があります。しかし、肺がんの治療に関して、現時点では、従来のX線を使う放射線療法よりも優れた治療効果があるという研究結果が得られていない状態です。

2020年6月時点で、肺がんに対する粒子線治療は保険適用外となっています。そのため、治療費は全額負担となります。

「粒子線」の方が「X線」よりも正確な照射が可能な理由

粒子線とX線を比較すると、がん細胞以外の正常組織に与えるダメージに違いがあります。

X線
皮膚の表面から2~3センチの深さの場所でダメージが最大になり、その後はゆるやかに減少していきます。

粒子線
皮膚の表面から一定の深さの場所でダメージが最大になり、その後は急激に小さくなります。
ダメージが最大になる深さは、粒子線のエネルギーを変えることでコントロールできます。例えば粒子線のエネルギーが高いほど、ダメージが最大になる場所は深くなります。

このような性質の違いがあるため、粒子線はX線よりも正常組織に与えるダメージが減ります。

その結果、放射線による合併症のリスクも低下、肺の状態やそのほかの全身の状態が悪い患者さんでも治療が可能になるのではと考えられますが、今のところ、X線と粒子線を比較した場合、粒子線の方が治療成績が良いという研究結果は得られていません。

粒子線には「陽子線」と「重粒子線」の2種類がある

肺がんの治療に使われる粒子線は、高いエネルギーをもつイオンの流れです。イオンには様々な種類がありますが、現在治療に使われているのは「水素イオン」と「炭素イオン」です。

水素イオンは原子核の構成要素である「陽子」だけでできているので、水素イオンの流れを「陽子線」と呼びます。

水素イオン以外で、現在治療に使用されているのは「炭素イオン線」だけです。炭素イオンは水素イオンよりも質量が重いので、一般的には「重粒子線」と呼ばれています。

重粒子線と陽子線を比較すると、重粒子線の方が、よりピンポイントでダメージを与えられるという性質があります。

「粒子線治療」はどこで受けられるの?

2019年現在、日本国内で陽子線治療を受けられる施設が16施設、重粒子線治療を受けられる施設が6施設あります。なお、陽子線治療と重粒子線治療の両方を受けられる施設は、兵庫県立粒子線医療センターだけです。

治療を受けるための条件

主な条件は、「遠隔転移がない(ステージⅠ~Ⅲ)」「これまでに肺がんの放射線療法を受けたことがない」「照射する場所に治療が必要な炎症がない」などです。

そのほかにも「粒子線治療」だけを行う施設で治療を受ける場合は、主治医からの紹介が必要です。また、粒子線治療後、主治医が経過観察を担当することになるので、その点について主治医からの同意が得られていることが条件になります。

監修医師

小島 史嗣 Fumitsugu Kojima

聖路加国際病院
専門分野:呼吸器外科

専門医・認定医:
日本外科学会 専門医、日本呼吸器外科学会 専門医・認定ロボット手術プロクター、日本がん治療学会 認定医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。


後藤 悌 Yasushi Goto

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
専門分野:臨床腫瘍学

専門医・認定医:
日本内科学会認定内科医 総合内科専門医 指導医、日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 指導医、日本がん治療認定機構 がん治療認定医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医 指導医

*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。

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