LA Butterfly

ダヴィンチ手術 ロボットでより精密な手術が可能に

ダヴィンチを使う
「ロボット支援手術」のメリット

ダヴィンチは、内視鏡を使う「腹腔鏡手術」を支援するロボットです。では、お腹を大きく開けて行う「開腹手術」と比べると、「腹腔鏡手術」にはどんなメリットがあるのでしょう?

次に、従来の「腹腔鏡手術」と「ロボット支援手術」を比較した場合、「ロボット支援手術」にはどんなメリットがあるのでしょう?

1.「開腹手術」と比べた「腹腔鏡手術」のメリット

「腹腔鏡手術」は「開腹手術」に比べると傷が小さく、痛みや出血が少なくて済みます。また、入院期間も短くなります。さらに手術痕も、ほとんど目立ちません。

開腹手術腹腔鏡手術
傷の大きさ10cm程度
(手術痕が目立つ)
3~4cmの傷が1か所
1cm程度の傷が4か所
(手術痕はほとんど目立たない)
「開腹手術」と「腹腔鏡手術」の傷の大きさ

赤い線はメスで切る部分

2.「腹腔鏡手術」と比べた「ロボット支援手術」のメリット

「ロボット支援手術」は「腹腔鏡手術」に比べると、より正確で精密な動作が可能です。
また、より自由度の高い手術ができるため、次のようなメリットがあります。

1)正確な切開や縫合が可能

拡大視野の下で操作できる上に、手ぶれ防止機能もあるため、人の手で鉗子を操作する従来の「腹腔鏡手術」よりも正確な手術が可能です。

2)機能温存が期待できる

前立腺がんの手術では、手術後に尿失禁や性機能障害(勃起障害)が起こるリスクがあります。「ロボット支援手術」はこのリスクを低くできるので、機能温存が期待できるのです。

●尿失禁のリスクを低減できる理由

排尿のコントロールは「外尿道括約筋」が行っています。前立腺がんの手術では、前立腺を全て摘出するのですが、「外尿道括約筋」は前立腺のすぐ近くにあります。

尿失禁のリスクを下げるためには、「外尿道括約筋」を傷つけずに前立腺を摘出する必要があります。そのためには、正確で細かい動作が可能な「ロボット支援手術」の方が有利なのです。

●性機能障害(勃起障害)のリスクを低減できる理由

前立腺の周りには勃起神経が走っています。性機能を温存するには、神経がある部分をできる限り残しながら前立腺を摘出する必要があります。しかし従来の「腹腔鏡手術」では細かい作業が難しいため、以下の2つの選択肢しかありませんでした。

1.勃起神経を残す(前立腺のみ切除する)
2.前立腺と勃起神経、両方を切除する

一方、細かく正確な動作が可能な「ロボット支援手術」では、2つの選択肢の中間にあたる勃起神経の「部分温存」も可能になりました。また、上記1の「勃起神経を残す」場合でも、より精度が高い手術ができるというメリットもあります。


前立腺がんワンポイント 02

なぜ、ダヴィンチは自由度が高い手術が可能なのか?

従来の「腹腔鏡手術」で使われる鉗子は、細長い棒状の器具です。そのため、腹腔内で鉗子の先を動かす場合、その範囲には制限がありました。

一方、ダヴィンチのロボットアームに取り付けられる鉗子には関節がついています。このため角度を変えたり、回転させたりすることができます。狭い腹腔内(お腹の中)でも、比較的自由な方向から手術を進めることが可能なのです。

細長い器具を使用
→動かせる範囲に制限がある

関節がついている器具を使用
→比較的自由に動かせる

ダヴィンチのロボットアームに取り付けられる鉗子の先端部分。関節がついているので自由度が高い


前立腺がんワンポイント 03

「ロボット支援手術」の弱点を補う「仮想触覚」

ロボット支援手術の弱点として、触覚がないことが指摘されることがあります。従来の「腹腔鏡手術」では、医師が鉗子を手で直接持って操作するため、鉗子を通して前立腺の硬さなどの情報を得ることができました。一方「ロボット支援手術」では、鉗子が取り付けられたロボットアームはモーターで駆動されているので、医師は自分の触覚を通して前立腺の状態を知ることができません。

ところが、「ロボット支援手術」を行う回数が増えてくると、次第に「この部分は硬い」「ここは柔らかい」とわかるようになるといいます。理由として考えられるのは、カメラの画像から得た視覚情報を脳内で分析することで、 組織の硬さを推測していることです。

実際にロボットを操作している医師は、まるで触覚があるかのように硬さや柔らかさを感じるそうです。これを「仮想触覚」と呼びます。人間がもつ「仮想触覚」という優れた能力のおかげで、より高い精度でロボットアームを操作することが可能なのです。

経験を積むと、目で見ているだけなのに「仮想触覚」が得られるようになる

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