甲状腺癌闘病記:看護師・樋口麻衣子さんが語る、甲状腺がんの診断、治療、そして自分らしさを見つけた人生の転機。希望と夢に満ちた物語。
LA Butterflyとは:
LA Butterflyは、ロサンゼルス発信のがんサバイバーたちが『自分らしさ』を見つけ、力を得たストーリーを届けるプラットフォーム。さなぎから蝶へと羽ばたくイメージを込め、彼らの言葉、学び、おすすめアイテムをまとめ、希望と勇気を共有します。
甲状腺がん闘病記:
甲状腺癌闘病記は、看護師として働きながら20代で甲状腺がんを経験した樋口麻衣子さんの感動的な物語です。2012年に発覚した甲状腺がんは、彼女の人生を大きく変えました。手術や放射線治療を乗り越え、がんと向き合う中で自分らしさを見つけ、夢を追い続ける姿は多くの人に希望を与えます。看護師としての専門知識と患者としての実体験を交え、がんのイメージを変え、前向きに生きる力を伝えています。この記事では、樋口さんの闘病記を詳細に振り返り、彼女の心境の変化や夢、そして闘病中の人へのメッセージを紹介します。
甲状腺がん闘病記で見つけた自分らしさと夢:
樋口麻衣子さんの甲状腺癌闘病記は、単なる病との闘いにとどまらず、自分自身と向き合い、人生の新たな目的を見つける旅でもありました。20代という若さで甲状腺がんを発見し、看護師としての知識を持ちながらも患者としての不安や葛藤を経験した彼女。その過程で、がんと共存しながら自分らしく生きることの意味を学び、夢を追い続ける力を得ました。
自分らしさの発見
樋口さんが甲状腺がんを「黒歴史」として封印しようとした初期の心境は、がんに対する社会的な負のイメージを反映しています。彼女は治療中、自分の病気を周囲に隠し、別の病院で治療を受けることで「普通の生活」に戻ろうとしました。しかし、化学療法室への異動をきっかけに、患者や医療スタッフの姿から大きな気づきを得ます。患者一人ひとりが自分らしく生きる姿に触れ、「がんの名前だけでその人のイメージが決まるわけではない」と感じたのです。この気づきは、彼女が自分自身を受け入れ、オープンに語る勇気を持つ転機となりました。
特に、ミュージカル『RENT』のメッセージ「No day But today(過去も未来も必要ない。大切なのは今を精いっぱい生きること)」は、彼女の心に深く響きました。この言葉は、がんという経験を過去の重荷としてではなく、人生の新たな一面として受け入れるきっかけに。闘病を通じて、樋口さんは「自分らしさ」を再定義し、がんと共存しながらも輝く生き方を見出しました。
夢への一歩
樋口さんの闘病経験は、彼女のキャリアにも大きな影響を与えました。化学療法室での経験から、がん患者一人ひとりに寄り添った医療の重要性を実感し、看護師としての枠を超えて専門性を追求する決意をします。現在は大学院でがん専門看護師を目指し、勉強に励んでいます。彼女の夢は、がん患者が自分らしく生きられるよう、病院での初回対応や治療環境を改善すること。
「がんになっても自分らしく生きられる」というメッセージを広めるため、彼女は研究や医療現場での実践を通じて貢献したいと考えています。闘病中の患者が希望を持てるよう、最新の研究や治療法の情報を届け、病院が患者にとって安心できる場所になるよう尽力する姿は、彼女の強い使命感を表しています。
前向きで力を与える発言や考え:
- 「がんになっても、その人らしく生きれる」:「がんの名前だけでその人のイメージって決まらないなと思うんです。」
- 「今を精いっぱい生きること」:「過去も未来も必要ない。大切なのは今を精いっぱい生きることだと思うんです。」
- 「がんと一緒に暮らせる」:「がんのイメージは死や哀れさかもしれないけど、研究や患者さんの姿から、がんと共存しながら自分らしく生きられる希望が見えると思うんです。」
- 「つらい時間も人生の一部」:「つらいときも、頑張って悩んで、もがいた時間は、人生の新しい一面だったんだなと思うんです。」
- 「病院の役割が大切」:「病院でのファーストコンタクトが、患者さんの人生やその期間を決めると感じるんです。だからこそ、患者さんに寄り添う対応をしたいと思うんです。」
(がんノート)
甲状腺がん闘病記:診断と治療の詳細:
診断の過程
- 初期発見(2012年夏):髪をアップにした際、首に「ポコッ」とした腫れを自覚。甲状腺がんはゆっくり進行するため、2年ほど気づかず進行していた可能性。
- 検査:
- CT検査:腫瘤が発見され、「怪しい」と判断。
- 細胞診(細針吸引生検):腫瘍の細胞を採取し、顕微鏡で観察。乳頭がんの可能性が示唆されたが、明確な「がん」の告知はなし。
- 診断の曖昧さ:医師から「がん」と直接言われず、「手術しましょう」と進められた。若年かつ医療者であることを考慮し、告知が慎重だった可能性。
- ステージ:甲状腺がんの分類ではステージ1(局所的な腫瘍)、一般的ながん分類ではステージ3(リンパ節転移の可能性)。
治療の詳細
- 手術:
- 甲状腺全摘術:腫瘍が大きく、周囲組織に癒着していたため、通常より大規模な手術。6~7時間に及び、声帯や食道への影響が懸念された。
- リンパ節郭清:転移したリンパ節を切除。後遺症として免疫力低下や咳の症状が残る。
- 結果:術後、話す・食べる・呼吸が可能で、回復に安堵。
- 放射性ヨウ素内照射療法:
- 概要:甲状腺がんは抗がん剤が効きにくいため、放射性ヨウ素(I-131)をカプセルで摂取し、体内から残存甲状腺組織やがん細胞を破壊。
- プロセス:
- 放射性ヨウ素を取り込みやすくするため、ヨウ素制限食(海藻や乳製品を避ける)を事前に行う。
- 鉄製の隔離室に3日間入室。外部との接触は窓越しのみで、廃棄物も厳重管理。
- 2回実施(半年間隔)。
- タイミング:手術後、組織が安定するまで半年~1年空けるが、残存リンパ節転移が見つかり追加手術。
- ホルモン療法:
- 目的:甲状腺全摘により甲状腺ホルモン(チロキシン)が不足するため、人工ホルモン(レボチロキシン)を投与。
- 効果:ホルモン補充と同時に、残存甲状腺組織の活動を抑制し、がん再発を予防。
- 継続性:一生継続が必要。
治療の精神的影響
- 医療者としての知識が不安を増幅。手術のリスク(声帯麻痺、嚥下障害など)を詳細に理解していたため、精神的な負担が大きかった。
- ストレッチャーでの手術室移動や隔離室での孤独感など、患者視点での恐怖を初めて実感。
甲状腺癌闘病記:甲状腺がんの医学的説明
甲状腺がんは、甲状腺(喉の前面にある蝶形の臓器)に発生する悪性腫瘍です。甲状腺は、代謝や体温調節を司る甲状腺ホルモンを分泌する重要な臓器。がんの種類や進行度により治療法や予後が異なります。
甲状腺がんの種類
- 乳頭がん(70~80%):樋口さんのケース。ゆっくり進行し、予後が良好。リンパ節転移が起こりやすい。
- 濾胞がん(10~15%):血行性転移(肺や骨)が特徴。
- 髄様がん(5~10%):遺伝性の場合あり。
- 未分化がん(1~2%):進行が早く、予後不良。
症状
- 首の腫れやしこり(樋口さんが自覚した症状)。
- 声のかすれ、嚥下困難、呼吸困難(進行した場合)。
- 多くは無症状で、検診や偶然発見されることが多い。
診断方法
- 超音波検査:腫瘍の大きさや形状を評価。
- 細針吸引生検:細胞を採取し、悪性か良性かを判定。
- CT/MRI:腫瘍の広がりや転移を確認。
- 血液検査:甲状腺機能(TSH、FT4)や腫瘍マーカー(カルシトニン、CEA)を測定。
治療方法
- 手術:甲状腺部分/全摘術、リンパ節郭清。
- 放射性ヨウ素療法:乳頭がんや濾胞がんに有効。
- ホルモン療法:甲状腺ホルモン補充とがん抑制。
- 放射線療法/化学療法:未分化がんや進行がんに使用する場合あり。
予後
甲状腺がん(特に乳頭がん)は予後が良好で、10年生存率は90%以上。ただし、若年患者ではリンパ節転移が起こりやすい。
参照情報
- 日本甲状腺学会
- 甲状腺がんの種類、診断、治療ガイドラインの詳細。
- 国立がん研究センター
- 甲状腺がんの疫学データと治療法の解説。
- American Thyroid Association
- 放射性ヨウ素療法やホルモン療法の国際的ガイドライン。