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大腸がんの診断法

 

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検査

1.便潜血検査

健康診断でよく行われる、便に血が混ざっていないか調べる検査で、ヘモグロビン(赤血球の成分の1つ)を検出します。

2日に分けて2回行い、どちらか1回でも陽性となった場合は、大腸内視鏡検査が勧められます。

この検査で、大腸がんによる死亡が70%減少するという日本のデータがあります。 大腸がん検診の便潜血検査の受診率は、2019年のデータでは男性47.8%、女性40.9%です。受診率は年々高くなっていますが、先進国の中では低いとされます。

2.直腸診

肛門から指を入れて、腫瘍に直接触れる、最も重要で基本的な診察です。

括約筋からの距離・位置を確認し、腫瘍の動きで深さが推測できます。

肛門を残す手術ができるかどうかは、直腸診で判断するのが一番です。

3.大腸内視鏡検査

肛門から内視鏡を入れて大腸を観察します。

小さな病変も発見でき、細胞検査もできるので、大腸がんを一番確実に診断する検査といえます。良性のポリープや小さな大腸がんは、検査と同時に切除・治療を行うこともできます。

量の多い下剤を飲むことが体の負担になること、検査中にお腹が張って痛む場合があることが欠点です。まれですが、出血や穿孔(腸に穴が開くこと)が起こる可能性があります。

4.注腸造影

肛門から造影剤を注入してX線写真を撮る検査です。

大腸内視鏡検査が普及する前は広く行われていましたが、小さな病変が見つけにくく、異常を見つけても細胞検査ができず、診断を確定できないことなどから、現在は、手術前などに補助的に行われる程度になりました。腸の形がよくわかるので、術前に手術のイメージを得るのに役立ちます。

5.CT検査

X線で体の輪切りの写真を撮る検査です。

周囲の臓器への浸潤、周囲のリンパ節転移、肝臓や肺などの離れた臓器への遠隔転移、手術に関係する血管の走行、手術中に配慮すべき他臓器の問題などを診断します。

ヨード系造影剤には、腎臓が悪いと使えない、アレルギーの可能性がある、などの欠点があります。術前にステージ(進行度)を診断するのに一番重要な検査です。

6.MRI検査

磁力で体の輪切りの写真を撮る検査です。

直腸がんでは、腫瘍の近くを診断する目的で行われます。特に、CTより周囲臓器への腫瘍の浸潤の程度がわかりやすい点が優れています。

CTと違って放射線被爆しない利点もありますが、体の中に金属があると検査できない場合があり、狭い機械なので閉所恐怖症の人には難しい、CTより時間がかかるので狭い範囲しか撮れないなどの欠点があります。

7.PET-CT検査

糖分と放射性同位元素(アイソトープ)を合体させた物質(FDG)を注射し、3~4時間後、特殊な装置で撮影します。その画像をCT画像と重ねて、糖分吸収が多い場所を発見する検査です。

がん細胞は糖分を多く吸収して増えるので、がん細胞がいる場所がわかりやすくなり、CTやMRIでわからない転移や再発がわかることがあります。ただ、脳や心臓などのもともと糖分が多く取り込まれる器官や、FDGが入る尿の通り道(腎臓・尿管・膀胱)は判断しづらいです。また、7~8ミリ以下の病変は診断できないことがあります。

8.腫瘍マーカー検査

採血で、がんとともに血中に増える物質(腫瘍マーカー)を測る検査です。

大腸がんではCEAとCA19-9が一般的です。がんがかなり進行しないと上昇しないので、この検査だけでは大腸がんの「早期発見」は難しいとされていますが、手術後の定期検査で再発を発見するのに有効です。

腫瘍以外でも、CEAは糖尿病、喫煙、肝炎・肝硬変、腎不全など、CA19-9は肝炎・肝硬変、胆石症などで上昇し、CA19-9は体質的に値が上がらない人もいます。

9.遺伝子検査

遺伝性大腸がんでは、家族性大腸腺腫症の原因のAPC遺伝子、リンチ症候群の原因のDNAミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2)を検査します。

リンチ症候群では、DNAミスマッチ修復遺伝子がうまく働かず、DNA配列の繰り返し部分(マイクロサテライト)の繰り返し回数のばらつきが9割で見られます。そのため、リンチ症候群を疑った場合にまず「マイクロサテライト不安定性」の遺伝子検査を行うことがあります。

一方、抗がん剤のイリノテカン投与前に、副作用の可能性を調べるUGT1A1遺伝子検査もあります。UGT1A1はイリノテカンを分解する酵素で、その働きが弱いと抗がん剤の濃度が高くなり、副作用が増えます。

これらの遺伝子は、親から子に遺伝する可能性がありますが、遺伝する可能性のない遺伝子検査もあります。

【大腸がんワンポイント】

遺伝しない遺伝子検査

がん細胞の遺伝子を調べて、抗がん剤の効果を予測する検査です。

抗EGFR抗体薬投与前にRAS遺伝子変異を調べると、効かない可能性がわかるとされています。

抗EGFR抗体薬はがん細胞の表面にある増殖スイッチをブロックする薬ですが、RAS遺伝子は細胞の中でその増殖命令を伝えるため、これが変異していると勝手に増殖命令を伝えてしまい、増殖スイッチをブロックしても意味がないのです。

組織型分類

がんは組織型で分類されています。

大腸がんは、そのほとんどが腺上皮の細胞からできた「腺がん」です。

腺がんは化学療法(抗がん剤)や放射線治療の効果はあるのですが、それだけで治る可能性は高くなく、治癒のためには通常手術が必要といわれています。

肛門の近くでは皮膚がんの組織型である「扁平上皮がん」ができることがあります。

腺がんと比べて抗がん剤と放射線治療の効果が高く、化学放射線療法が第一の選択肢になります。

ステージ分類

大腸がんのステージ(病期:進行度)は、

・腫瘍の深さ(T)

・近くのリンパ節転移(N)

・離れた臓器への遠隔転移(M)

の3つの因子、TNMにより決定されます。

日本では「大腸癌取り扱い規約」が用いられていますが、世界ではUICC(国際対がん連合)の「 TNM悪性腫瘍分類」が用いられています。

ほぼ一緒ですが、一番の違いは「主リンパ節の扱い」です。

主リンパ節は腫瘍に向かう血管の根元にあります。伝統的に日本では、腫瘍に向かう血管の根元までリンパ節を切除する「D3リンパ節郭清(かくせい)」が、進行がんの標準手術とされています。主リンパ節の転移をN3と表します。

直腸がんでは、下腸間膜動脈に沿ったリンパ節(上方リンパ節)のみでなく、内腸骨動脈に沿ったリンパ節(側方リンパ節)にも転移が見られることがあり、側方リンパ節の転移もN3としています。これに対してUICC「TNM悪性腫瘍分類」では、リンパ節転移の位置は考慮せず、転移個数で分類します。

LA Butterflyとは:

LA Butterflyは、ロサンゼルス発信のがんサバイバーたちによってデザインされた日米仏対応プラットフォームです。その名前に込められたのは、さなぎの中から美しい蝶として羽ばたくイメージ。治療内容や医学的な情報よりも、サバイバーたちがどのように自分らしさを発見し、それを力に変えてきたかに焦点を当てています彼らの言葉、学び、そして日常生活を支えたアイテムを共有することで、同じ道を歩む人々に希望と勇気を届けます。各サバイバーのストーリーは、時には本人へのインタビューを通じて深く掘り下げ、リアルで心に響くメッセージを届けます。LA Butterflyは、がんとの闘いの中で自分らしさを見つけ、輝き続ける人々の物語を紡ぐ場所です。

 

 

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