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放射線療法

 

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大腸がんの放射線治療には、①補助放射線治療と②緩和的放射線治療があります。
前述の術前補助化学療法併用放射線療法の他に、転移巣による痛みや吐き気などの各種症状がある場合は、放射線照射を行うことで症状の緩和が得られる場合があります。

補助放射線治療と緩和的放射線治療

①補助放射線治療
骨盤内の再発を抑える、人工肛門(ストマ)を避けるなどの目的で行われ、切除可能な直腸がんが対象です。主に手術前の「術前照射」で、薬物療法と共に行う場合もあります。

②緩和的放射線治療
骨盤内の直腸がんなどの痛みや出血、便通障害、骨転移による痛みや骨折の予防、脳転移による嘔気・嘔吐、めまいなどの神経症状などを改善する目的で行われます。

放射線治療の副作用

放射線を照射している期間の①早期合併症と、治療終了後、数カ月~数年後の②晩期合併症があります。照射された部位により症状は異なります。

早期合併症
だるさ、嘔気・嘔吐、食欲低下、皮膚炎、白血球減少などがあります。頭部への照射では頭痛、嘔気、脱毛、腹部や骨盤への照射では下痢・腹痛などがあります。骨転移などで胸椎等に照射した場合、骨髄抑制が早期から晩期に生じることがあります。

晩期合併症
照射範囲の腸管や膀胱などから出血や膀胱炎・腸炎(頻尿や下痢)を起こしたり、隣接臓器との瘻孔(ろうこう、穴のこと)を作ったりすることがあります。胸椎等に照射した場合、照射範囲に肺が含まれるため放射線肺炎が生じることもあります。

脳転移

転移巣の数や大きさによって、定位放射線照射や全脳照射などの放射線療法を行います。手術療法も適応となる場合があるため、それぞれの状況に応じて治療を選択します。

骨転移

骨転移による骨痛などの際も、放射線照射を行うことで疼痛緩和が得られることがあります。

大動脈周囲リンパ節転移

腹部の大動脈周囲リンパ節転移による腹腔神経叢(腹痛を感じる神経)浸潤や圧排(押された変形・異常)がある場合も、放射線照射によって腹痛の緩和が得られることもあり、照射を行うことがあります。

重粒子線治療

重粒子線治療は特殊な放射線治療です。通常の放射線治療に比べて、狙ったがん組織にだけ当てやすいとされています。周囲の正常な臓器に放射線が当たると副作用につながるので、それを避けて腫瘍により効率よく放射線を当てることができます。治療機械がある施設が限られていることや、先進医療で高額なこと、厳密には効果が医学的には確立していないことが欠点です。

最新の治療法

直腸がんの術後局所再発率を下げるために、手術前治療として、化学放射線治療が行われることがあります。その1~2割では、病理検査でがん細胞が確認できないほど縮小することがあります。その場合、予定の手術を行わずに待機・経過観察する待機療法(watch & wait)を行うと、7~8割は再発しない可能性があるといわれています。完全に確立した治療法ではありませんが、うまくいけば、手術を回避できるため手術による後遺症(排便・排尿・性機能障害)が起こらないので、有望な治療法になると考えられています。

再発・転移、生存率

再発率
大腸がんの再発率はステージによって異なります。2007年の大腸癌研究会の全国登録データによると、ステージⅠで5.7%、ステージⅡで15.0%、ステージⅢで31.8%です。ステージⅡは腫瘍の深さで、ステージⅢはリンパ節転移の個数で、それぞれⅡa、Ⅱb、Ⅱc、Ⅲa、Ⅲb、Ⅲcに細分類されていて、a→b→cの順にステージが上がり、再発率が高くなります。

再発・転移部位
大腸がんが転移・再発しやすい部位は肝臓、肺です。腹膜や大動脈周囲リンパ節、吻合部や手術部位に近い部分の再発である局所再発もあります。
結腸と直腸では転移の多い部位が少し違います。結腸からの血流は、門脈を介して肝臓を通過した後に心臓に戻るのに対して、直腸の血流は、一部肝臓を通過せずに直接心臓に戻り、肺を通過します。そのため結腸がんは肝臓への転移が多く、直腸がんでは肺への転移が多いのです。また直腸がんは周囲に重要臓器が多くて切除範囲を広げにくく、骨盤内が狭くて手術が難しいこともあり、局所再発が多いです。
転移しても、切除できれば治癒することがあります。他のがんでは転移をするとほとんど治癒しないので、大腸がんは「比較的治りやすいがん」といえます。

生存率
大腸癌研究会の全国登録データ(2000~2004年)によると、大腸がんの5年生存率は、ステージⅠで91.6%、ステージⅡで84.8%、ステージⅢaで77.7%、ステージⅢbで60.0 %、ステージⅣで18.8%です。

ベストな治療法選択のためには?

重要なのは、①正確な診断、②診断と患者の個別状況に基づく治療法の決定の2つと考えられます。

正確な診断
治療法選択で特に重要な検査は、大腸内視鏡検査とCT検査です。大腸内視鏡検査では、がんかどうか、がんであれば内視鏡切除か、外科手術が必要なのかが判断できます。内視鏡切除と外科手術のどちらがふさわしいかを判断するために、拡大内視鏡検査や超音波内視鏡検査を行う場合がありますが、一番重要なのは通常の大腸内視鏡検査です。
CT検査では、腫瘍が周囲の臓器に浸潤していないか、周囲のリンパ節が腫れて転移が疑われないか、遠隔臓器(肺や肝臓など)に転移がないかがわかり、ステージの診断ができます。手術の際の周囲の臓器の合併切除の必要性、リンパ節郭清の範囲、他臓器転移による切除の必要性、手術に影響する臓器の状態などがCT検査で判断できます。
直腸がんでは、さらに直腸指診と骨盤部MRI検査が重要な検査です。直腸指診は、特に下部直腸がんで、肛門温存可能かどうか、周囲臓器への浸潤の重要な情報を得ることができます。また骨盤部MRI検査は、周囲の臓器への浸潤を診断するのに適しています。

診断と個別状況に基づく治療法の決定
これらの診断が正確に行われていれば、「大腸癌治療ガイドライン」で自動的に治療が決まると思うかもしれません。しかし、患者の個別状況を考える必要があります。たとえば、「内視鏡切除か外科手術か迷う病気で、外科手術適応と思われるが、いろいろな持病により手術の危険性が高いので、内視鏡切除にした」というケースも考えられます。
このように、正確な診断と、患者の個別状況・情報によって、治療法を決定することが、適切な治療を導きます。

 

 

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