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乳がんって、どんな病気?

1.乳がんの症状

乳がんは自覚症状がわかりにくいため、定期的にマンモグラフィー検診をうけ、早期発見することがもっとも重要です。
しかし乳房は体の表面にあるため、ご自身で乳がんに気付くこともあります。日頃からご自分の乳房の状態を理解し、乳房の変化に気づくことも大切になります。

1)乳がんはどんな症状?

乳房に痛みがあり乳がんを心配される方が多いですが、がんが早期に痛みを起こすことは稀です。乳房で痛みを起こすのは、乳腺症や乳腺症、神経の痛みなどの良性の場合が多いですが、痛みが続き生活に支障があれば近医を受診してください。
一方で、乳がんの代表的な症状はしこりで、その他に乳首からの出血、乳がんが進行してくると皮膚のただれ、乳房の左右差や変形、えくぼのような凹みがでることもあります。

しこり

しこりは、乳がんの症状のなかでもっとも一般的な症状です。乳房や乳頭の裏、下のほうなど、しこり自体は乳房から腋までのさまざまなところにできます。乳がんは進行するにつれてだんだん大きくなっていきます。
早期のうちはしこりは手に触れないことが多く、大きくなるにつれしこりが分かるようになります。がんが進行すると生存率も下がってくるので、日ごろから自己触診で乳房のしこりを確認することはもちろん、異変に気付いたらできるだけ早くに乳腺外科や乳腺科のある医療機関を受診しましょう。

乳房の左右差

乳房の左右差自体は、多少であれば健康な女性にも見られるものですが、左右差が極端な状態ある場合には注意が必要です。
「左右で大きさや硬さが明らかに違う」「片方の乳房の大きさや硬さが変わった」という場合、乳がんが潜んでいる可能性もあります。

えくぼのような凹みや乳房のひきつれ

乳がんのしこりが皮膚や乳頭を引っ張ることで、乳房の皮膚のひきつれや乳頭の位置に左右差が目立つようになったり、乳房の皮膚にエクボのような凹みができたりすることがあります。
その場合、乳腺や皮膚の下にしこりが隠れていることがあります。

ただれ

乳頭や乳輪のまわりがただれ、時にはかさぶたのようになるパジェット病という乳がんがあります。
普段着ている服や下着が皮膚とこすれて皮膚炎を起こしたり、湿疹やアトピー性皮膚炎によって同じような状態が引き起こされるケースもありますが、治りにくい場合は、皮膚科や乳腺科などの医療機関を早めに受診しましょう。

炎症性乳がんには注意!

炎症性乳がんは、乳房の皮膚内にあるリンパ管にがん細胞が広がり、進行が早いタイプの乳がんです。一般的な乳がんは腫瘤を形成しますが、炎症性乳がんは乳房の皮膚が全体的に赤くなったり皮膚がむくんだりするだけで、痛みやしこりもないという特徴があります。
同じような皮膚の赤みなどの症状を起こすものに乳腺炎などがありますが、乳腺炎は痛みや皮膚の熱感を伴うことが多いです。
また、授乳を行なっている方は授乳期の乳腺炎の可能性がありますので、まず産科や婦人科で相談をしましょう。乳房の皮膚の発赤に気付いたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。

乳頭から血液や黒っぽい色の液の分泌

通常女性は授乳前でも50-60代になっても、乳頭から白い液体や黄色い母乳のような分泌液が出ます。
一方、乳がんでも乳頭から血液が混じった分泌液がでることがあります。母乳が通る管である『乳管』に乳がんはできることが多く、その部分から出血するために起こる症状です。
「血液や黒色に近い液」が乳頭から分泌されるという状態が続くようであれば、できる限り早くに医療機関を受診しましょう。

Youtubeチャンネル 乳腺科医が作る乳がん大辞典 BC Tubeより乳頭分泌についての説明

リンパ節の腫れ

脇の下や鎖骨の上にあるリンパ節に乳がんが転移した場合、リンパ節が腫れることも少なくありません。「脇の下にしこりができる」「腕がむくむ」「腕にしびれるような痛みを感じる」などの症状が出るようになります。

乳がん発生のリスクを高める要因

乳がんは、『女性ホルモンによる影響』『生活習慣』『遺伝的要因』が関して発生するリスクが高いです。

1 女性ホルモンによる影響

女性ホルモン『エストロゲン』の分泌期間が長くなることにより、乳がんが発生するリスクが高まります。「初潮を迎える年齢が低い」「閉経が起こる年齢が遅くなる」「出産や授乳の経験がない」場合、乳がんにかかるリスクが高くなると考えられています。

2 生活習慣

喫煙習慣や運動不足、閉経後の体重増加など、身近な日常生活の状態が乳がん発生リスクに関係するケースも否定できません。

食生活においても、例えば乳製品や大豆製品のとりすぎは乳がん発生リスクにかかわると考えられています。栄養バランスがととのった食生活を整え、乳がん発生リスクを高めないように気をつけることが大事です。
また、運動不足や体重増加も乳がんの発生リスクを左右する可能性が高いため、日ごろから適度な運動の習慣を持つことも大事なポイントです。

3遺伝的要因

細胞を修復する役割を持つ遺伝子が変異することによって、血縁関係を持つ家系内で乳がんなどの発生リスクが高まることもわかっています。
そのうち、BRCAという遺伝子の変異が関わることによって、乳がんや卵巣がん、前立腺がんなどが家系内で起こる疾患を遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)といいます。
乳がんは40代以降で発生するケースが多いですが、遺伝的要因がある場合には若い年齢でも発症します。同一家系内に乳がんの方が多い場合には、がん遺伝相談外来を有する医療機関で相談されることをお勧めします。

詳しくは以下のホームページを参照ください。

日本HBOCコンソーシアムホームページ
https://johboc.jp/gaiyou/%E6%A6%82%E8%A6%81/

乳がんの検診は、いつから受け始めたらいい?

初期症状がわかりにくく、痛みを起こすことが少ない乳がんを早期発見するためには、定期的な乳がん検診を受ける必要があります。

乳がんは40代から発症するケースが多いため、40代にさしかかったら検診を受け始めるようにしましょう。
40代よりも若い年齢で乳がんを発症するケースは多くありませんが、乳がんの原因には遺伝的な要因が関係するケースもあることから、家族に若い年代で乳がんにかかっている方がいらっしゃる場合は、年齢が若くても検診を受けることをおすすめします。

 

2)乳がんのセルフチェック方法

しこりは乳がんにおける代表的な症状で、特に気づきやすい初期症状です。ただし、しこりがあるからといって乳がんというわけではなく、特に治療の必要がない良性のしこりもあります。
また、セルフチェックをしていても症状がない、しこりとして触れない乳がんも多いので注意が必要です。

乳がんのしこりと良性のしこりの見分け方

しこりの有無を確かめるためには、手のひらを使って乳房を全体的に触っていきましょう。しこりは乳房の外側のように上のほうにできるケースが多いと考えられていますが、乳頭の裏のような下のほうにしこりが見つかるケースもあります。
特に乳頭裏のしこりは見つかりにくいため、奥まで触ってチェックしてみましょう。

セルフチェック方法

良性のしこりと悪性のしこりを判別するには、しこりの動きに注目します。
一般的に良性のしこりはよく動くものや弾性があって境界がはっきりしないことが多く、乳がんのしこりは硬くて動きにくく、境界がはっきりとしているという特徴があります。しかし実際には、良性と乳がんを判断することは困難ですので、医療機関を受診してきちんと診断してもらうことが大切です。

しこりや乳房の変化を発見したら、早めに医療機関を受診しましょう

乳がんを早期に発見して進行を予防するには、しこりを早めに見つけることがとても大切なポイントです。40代にさしかかったら乳房に変化がないかを定期的にチェックする必要がありますが、セルフチェックによるしこりの発見には限界があることも否定できません。

しこりだと思って医療機関を受診しても硬い乳腺を触っていただけであるケースやしこりがあったとしてもなかなか気づかれないケース、しこりを触れないケースも決して珍しくありません。したがって、医療機関で1〜2年おきに定期検診を受け、セルフチェックはあくまでも定期検診の補助として考えること、乳がんの早期発見に欠かせないポイントです。

セルフチェックをするときのポイント

生理前は乳房が張りやすくセルフチェックが難しい時期になるため、生理前の自己触診は避けましょう。生理後から数日後の乳房の張りが少ない時期に、「皮膚がひきつっていないか」「乳頭にくぼみがないか」に加え、乳房内にしこりがないかを探していきましょう。

3)乳房に痛みを感じる!乳がんと乳腺症・乳腺炎の違い

乳がんになった場合、痛みを感じるケースはほとんどなく、それでも痛みを感じる場合には乳腺症や乳腺炎にかかっている可能性が考えられます。つまり、痛みを感じるか感じないかで、乳がんとほかの病気を区別することもできます。

乳腺症による痛み

乳腺症とは、女性ホルモンの動きによって生じる、生理中に起こりやすい病気です。

女性ホルモンには『エストロゲン(卵胞ホルモン)』『プロゲステロン(黄体ホルモン)』があり、エストロゲンは生理中に分泌されるホルモンで、過剰に分泌されることがあります。
エストロゲンの過剰分泌は乳管やまわりの組織の発達を促し、「乳房が大きくなる」「乳房が腫れたような形になる」などの異変を起こします。これにより、乳房が腫れて硬くなり、痛みが出るケースが多いです。症状が強く出る方においては、「激しく身体を動かさなくても乳房に痛みを感じる」「身体を動かすと乳房に強い痛みを感じる」など、はっきりとした痛みが出るようになります。

しかし、乳腺症はエストロゲンの影響を受けて生じることから、乳房の痛みは長く続くものではありません。生理が終わると痛みがおさまっていくケースが多いです。

乳腺炎による痛み

乳腺炎とは、乳腺に炎症が起こることによって生じる病気です。多くのケースでは授乳中に起こりますが、授乳中ではない時期に起こるケースもあります。乳腺症と同様に、痛みを伴うという特徴があります。

乳腺炎では、赤ちゃんへの授乳をする時期に乳首がうっ滞し、細菌が入り込んだために化膿するいう特徴があります。痛みや化膿に加え、熱を帯びた感覚や腫れができることも、乳腺炎の特徴です。乳がんでは痛みが少なく熱がこもるケースも少ないことから、痛みや熱を感じる場合には乳腺炎との関連性が考えられます。

医療機関を受診すべき乳房の痛みは?

乳がんにおいて痛みを感じるケースは非常にまれです。痛みを感じたために乳がんだと考えていても、脇腹から胸の前面に突き刺すような痛みを感じる『肋間神経痛』であるケースや乳腺症や乳腺炎による痛みが発生しているケースもあるためです。
また、乳がんのしこりが大きくなったとしても、必ずしも痛みにつながるわけではありません。

ただし、痛みにはほかの病気がかかわっている可能性も考えられ、薬の内服によって改善させることができるものもあることから、早めに医療機関を受診することが大事です。
時々痛みを感じる程度であればそれほど問題はなく様子をみられて良いことが多いですが、「一週間以上痛みが続いている」「生活に支障が出るほどに痛みが強くなっている」などの痛み、乳房の皮膚の発赤や熱感があるのなら、医療機関で必要な検査を受けて痛みの原因を確認しましょう。

Youtubeチャンネル 乳腺科医が作る乳がん大辞典 BC Tubeより乳房の痛みについての説明

2.乳がんはどこにできるか

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乳がんの約90%は、乳房内にある乳管から発生します。このタイプの乳がんを「乳管がん」と呼びます。また乳房内の小葉から発生する「小葉がん」と呼ばれるタイプも5%ほどあります。

小葉は、乳汁を分泌する腺房が集まってできています。腺房から分泌された乳汁は、乳管を通って乳管洞にためられます。

乳がんが進行してがんのサイズが大きくなると、しこりとして見つかる場合があります。一方、しこりとして見つかる前に、乳房の周りのリンパ節や、ほかの臓器(骨、肺、肝臓など)に転移して発見されることもあります。これは、乳がんの一部には転移しやすい性質があるからです。

3.罹患数が増えている乳がん

乳がんは女性のがんの中で最も罹患数(新たにがんになった人の数)が多く、全がんに占める乳がんの割合は約2割になっています(1)。さらに、1985年からの25年間の罹患数の推移を見てみると、乳がんは約3倍に増えています。
その一方、死亡数で見ると大腸、肺、結腸、膵臓、胃についで第6位です。また死亡率でみると約9%となっています(2)。

このように罹患数が多い一方で死亡者数が少ない理由は、初期で発見される患者さんが多いこと、また、ほかのがんに比べると予後がよく生存率が高いからです。

罹患数を年齢別に見てみると、30代から40代にかけて急激に増えています。一般的には、がんは60代以降で罹患数が増える傾向がありますが、乳がんは若い層の罹患数が多いという性質があります。

(1)全国がん罹患モニタリング集計 2015年罹患数・率報告
(2)人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編)

Hori M, Matsuda T, Shibata A, Katanoda K, Sobue T, Nishimoto H, et al. Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2009: a study of 32 population-based cancer registries for the Monitoring of Cancer Incidence in Japan (MCIJ) project. Japanese journal of clinical oncology. 2015;45(9):884-91.

4.乳がんの種類

乳がんにはさまざまな種類がありますが、大きく分けると『非浸潤がん』と『浸潤がん』に分類されます。

非浸潤がん

乳がんが発生する場所である乳管や小葉のなかにがんがとどまっている早期の段階である非浸潤がんは、乳がん検診やマンモグラフィーの普及により近年増えてきています。
乳がん全体の約15%の割合で発見されるようになりました。ステージ0期の乳がんであり、他の臓器などに転移することは非常に稀で、完治する可能性が高い乳がんです。

非浸潤がんに対する治療は、手術療法や放射線治療などの局所治療で、乳房内の乳癌再発を予防するために内分泌療法(ホルモン治療)を行うこともあります。

浸潤がん

非浸潤がんとは異なり、浸潤がんはがん細胞が乳管や小葉の外に浸潤し、他の臓器(骨、肺、肝臓など)に転移する能力を持つ状態です。乳がん全体の8割以上は浸潤がんで発見されますが、浸潤がんであったとしても治癒する可能性は十分あります。

浸潤がんの治療で重要なことは、乳がんの進行度と性質に応じた治療戦略を立てることです。
5年後や10年後に転移・再発させないために、手術療法や放射線治療、薬物療法(内分泌療法・化学療法・分子標的薬)をどのように組み合わせていくかが最も重要になります。

1)乳がんの進行度

乳がんは他のがんと比較して進行がゆっくりのことが多いですが、早期発見が重要であることには変わりません。最初は早期がんの状態ですが、治療を受けずに時間が経過すると進行がんになっていきます。

早期がん

乳がんのステージ0からステージ1に該当するがんです。しこりの大きさが2センチ以下でわきにがん細胞の転移が見られなければ、早期がんとして診断されます。

進行がん

ステージ3に該当するがんです。しこりの大きさが5センチ以上に大きくなったり、腋や鎖骨近くにあるリンパ節への転移を認めてくると、進行がんに分類されます。手術、放射線治療などの局所治療に加え、内分泌療法や化学療法、分子標的薬などの全身療法を用いた集学的治療によって治癒を目指します。

転移性乳がん

進行がんは更に時間が経過すると、血液やリンパを通じて骨や肺、肝臓などに乳がん細胞が転移していきます。ステージ4に該当する癌です。治療のゴールは生活の質を保ちながら、がんの進行をおさえてることです。手術や放射線治療の局所治療よりも、全身療法が治療の中心となります。

2)ステージ毎にみた乳がんの生存率

社会医療法人博愛会相良病院において2000年から2020年までに乳がんと診断を受けた方(約8,500名)の、ステージ毎の10年生存率は以下のようになっています。
早期癌であれば治癒する可能性が高いですが、ステージが高くなるにつれ生存率は下がっていきます。これはあくまで平均的な数値なので、ステージが高くても生活の質も重視しながら、最善の治療を受けていくことが重要になってきます。

・ステージ0(非浸潤がん):約98%

・ステージ1:約98%

・ステージ2:約87%

・ステージ3:約77%

・ステージ4:約20%

5.乳がん発生のリスクを高める要因

1)女性ホルモンの影響

乳がんの発生は、女性ホルモンのエストロゲンが関係しています。エストロゲンが分泌されている期間が長いほど乳がんのリスクが高まります。そのため、以下の条件に当てはまる場合、乳がんのリスクが高くなります。

・初経年齢が低い、閉経年齢が遅い
・出産経験がない、初産年齢が遅い、授乳経験がない
(妊娠・授乳期にはエストロゲンの分泌がとまるため、出産や授乳の回数が多いほど乳がんのリスクは低くなります)

ほかにも経口避妊薬の使用(経口避妊薬にはエストロゲンが含まれているため)、閉経後のホルモン補充療法でも乳がんのリスクが高まります。

2)生活習慣

飲酒、閉経後の肥満、身体活動度が低いことが乳がんのリスクを高くすることがわかっています。

3)遺伝的な要因

親、子、姉妹の中に乳がんの患者さんがいる場合、いない女性に比べると乳がんになるリスクが高いことがわかっています。

6.乳がんの性質(サブタイプ)について

浸潤がんの性質は『ルミナルタイプ』『トリプルネガティブタイプ』『HER2タイプ』『ルミナルHER2タイプ』の4つのタイプ(サブタイプといいます)に分けられます。乳がんと診断された場合、このサブタイプに応じた薬物治療を受けることがとても重要です。

免疫染色:抗体を用いて、がん組織の性質を調べる検査方法
ER:エストロゲン受容体、PgR:プロゲステロン受容体、HER2:ハーツー受容体

ルミナルタイプ

女性ホルモンが結合するホルモン受容体を有するタイプの乳がんで、女性ホルモンを受容体で受け取ることによってがん細胞が増殖します。乳がんの約70%に該当します。

トリプルネガティブタイプ

進行が早く、再発性が高いタイプです。抗がん剤治療や化学療法が必要になります。

HER2タイプ

再発性が強い乳がんとして知られていましたが、近年では医療技術の進歩によって有効な薬が増え、完治する可能性が高いタイプになっています。

ルミナルHER2タイプ

ルミナルタイプのおとなしさと、HER2タイプの活発さ、両方の性質を持ち合わせたタイプの乳がんです。

社会医療法人博愛会相良病院において2000年から2020年までに乳がんと診断された方のステージとサブタイプ毎の10年生存率は以下のようになっています。
以下の数字右の括弧内は95%信頼区間といって、全体の95%の方がこの中にあてはまるという範囲を示しています。
この生存率は2000年に診断された方も含まれており、治療は日々進歩しているため生存率は年々改善しています。従って、この数値はあくまでも参考値としてください。

  • ステージ1
    • ルミナルタイプ(増殖能の高いものも含めて):96% (94-97%)
    • ルミナルHER2: 92% (80-97%)
    • HER2タイプ:95% (81-99%)
    • トリプルネガティブ:89% (76-95%)
  • ステージ2
    • ルミナルタイプ(増殖能の高いものも含めて):91% (88-92%)
    • ルミナルHER2: 91% (85-95%)
    • HER2タイプ:89% (83-92%)
    • トリプルネガティブ:80% (74-85%)
  • ステージ3
    • ルミナルタイプ(増殖能の高いものも含めて):78% (70-84%)
    • ルミナルHER2: 75% (54-88%)
    • HER2タイプ:76% (64-85%)
    • トリプルネガティブ:59% (47-70%)
  • ステージ4のサブタイプ別は症例毎の差が大きいので省略します

7. 最新治療は良い治療なの?

現在、多くの治療法や薬剤が開発中です。今までの治療と比べて、新しい治療法が有効かを調べる臨床試験・治験が世界中で行われています。担当医にご自身が受けられるものはないかを尋ねるのも良いでしょう。

またインターネットや新聞等に最新治療として紹介されているものがありますが、最新治療が最も効果があるというわけではありません。
臨床試験でその長期的な効果と安全性が証明されると保険適応となり、医療施設で患者さんがその治療を受けることができるようになります。保険外の高額の治療は、その効果や安全性がわかっていないものが殆どですので注意しましょう。

8.患者さまの価値観や希望に合わせた治療提供

従来の乳がん治療は、医師が患者さまに病気や治療に関することを一方的に説明し、医師主導で治療が進められていくことも多くありました。しかし、近年では患者さまの価値観や希望に沿った医療を提供することが重視されるようになってきました。

特に転移性乳がんにおいては治癒が難しくなるため、「どのような治療でがんの進行を遅らせ、生存期間を延長するか」「どのように生活の質を落とさずに、日常生活を続けていくか」が治療の選択において重要なポイントとなります。
そのため、治療方針の決定において、「患者さまがどのようなことを大切にしているか」「患者さまがどれくらい乳がんやその治療についての情報を知りたいか」を、家族や大切な方、医療者も理解することが重要となります。

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