自分を責める必要はない!
子宮頸がんの多くは、数多くあるHPV(ヒトパピローマウイルス)のうち、ハイリスク型(がん化しやすい型)HPVにたまたま感染した後、その中の一部の方が数年以上の期間を経て発症します。
子宮頸がんの大きな原因がHPVであることもあり、子宮頸がんが発症した方のなかには、「自分に非があったのでは」と後悔される方がいます。しかし、性交渉を経験した女性の80%がHPVに感染すると言われています。HPVの感染自体は、ごく普通のことなのです。子宮頸がんになってしまった方は、がん化しやすいハイリスク型HPVに「あたってしまっただけ」です。
生活習慣病の場合は、その方の努力によって発症のリスクを下げることが可能ですが、子宮頸がんは、生活習慣病とは違う性質をもつ病気です。「自分に非があったのでは」とご自身を責める必要はありません。
子宮頸がんの治療には3つの方法がある
子宮頸がんの治療には、ほかの臓器に発生したがんの治療と同様、「手術療法」「放射線療法」「薬物療法」の3種類があります。それぞれ、どのような特徴があるのでしょう?
1) 3つの治療法は「局所療法」と「全身療法」に分類できる
3つの治療法のうち、がんを取り除くことで根治を目指して行う治療を「局所療法」と呼びます。「局所療法」として実際に行われるのは手術療法と放射線療法です。
一方、転移したがんを叩くための治療は「全身療法」と呼ばれます。「全身療法」として行われるのは薬物療法です。
2) 複数の治療を組み合わせるのは治療効果を上げるため
子宮頸がんの治療では、複数の治療を組み合わせる場合があります。たとえば「手術療法」の後に「放射線療法」のみ、または、「放射線療法」と「薬物療法」を同時に行う、というように使われています。
複数の治療を組み合わせる場合、「主治療」と「補助療法」と表現することがあります。例えば「主治療」として手術療法を行い、術後に「補助療法」として放射線療法が行われることがあります。
子宮頸がんの手術療法では、術前には画像診断でがんの位置や大きさを想定し、術中には肉眼で確認しながら病変がある部分を確実に切除します。このように、画像診断的にも肉眼的にも完全に切除できたにも関わらず、なぜ補助療法が必要なのでしょうか?
理由は、画像検査や肉眼検査で発見できるがんは、大きさが数mm以上のものだけだからです。「手術によって、画像診断的にも肉眼的にも完全に切除できた」としても、画像診断や肉眼では検知できないごく小さいがん細胞のかたまりが、切除していない部分にも転移している可能性を否定できません。その部分が、数ヶ月~数年の時間をかけて成長して再発する可能性があるのです。
そこで、がん細胞の固まりが残っていて再発するリスクが高いと判断される場合には、切除した部分以外に転移している可能性があるがんを叩くことができる放射線療法や薬物療法を行います。
子宮頸がんと“付き合って”いこう
初回の治療の結果「早期がん」と診断される場合でも、「再発の確率はゼロ」というわけではありません。そのため、定期的に通院して検査を行うことが大切です。これを「再発監視通院」と呼びます。再発監視通院の期間は、一般的には5年またはそれ以上です。受診の間隔は、患者さんの状態によって様々です。
再発監視通院のなかで再発と診断された場合は、放射線療法、薬物療法、手術療法の3種類のうち、いずれかの治療を行います。詳しくは「10「局所再発」と「遠隔転移を含む再発」の治療法」をご覧ください。
監修医師
金尾 祐之 Hiroyuki Kanao
公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:婦人科
専門医・認定医:
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本産科婦人科学会専門医、日本婦人科腫瘍学会腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。
温泉川 真由 Mayu Yunokawa
公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:腫瘍内科(主に婦人科がん)
専門医・認定医:
日本産科婦人科学会専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本細胞学会細胞診専門医、日本臨床腫瘍学会指導医
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。
田中 佑治 Yuji Tanaka
公益財団法人がん研究会 有明病院
専門分野:婦人科
専門医・認定医:
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。