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「リンパ節郭清」は省略できないの?

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子宮体がんの標準的な手術療法では、子宮の摘出と同時に、子宮体がんの所属リンパ節に対して「リンパ節郭清」を行います。

「リンパ節郭清」を行うと「リンパ浮腫」になるリスクがあるため、初期がんの患者さんで、いくつかの条件を満たす場合に「リンパ節郭清」が省略されています。 それ以外にも、「リンパ節郭清」の範囲を最小限にするための研究も行われています。

「リンパ節郭清」省略できる可能性がある場合は?

「リンパ節郭清」を省略できるのは、リンパ節への転移の可能性が低いと判断できる場合のみです。 具体的には以下の条件をすべて満たすとき、「リンパ節郭清」の省略が検討されます。

ただし注意が必要なのは、手術前に「リンパ節郭清を省略できる」と判断された場合でも、実際に手術を行った際に、患者さんの状態次第では「リンパ節郭清」を行う場合があることです。

医師は、手術中に患者さんの子宮のまわりの状態を詳しく観察します。 このとき、子宮の外にがんが広がっていることを確認した場合には、可能な限りその部分の切除を行うと同時に「リンパ節郭清」も行います。

リンパ節郭清とは?

「リンパ節郭清」は、リンパ節だけでなく、リンパ節の周りを覆っている脂肪も含めて切除することです。 脂肪も含めて切除する理由は、リンパ節だけを切除することを目指すと、誤ってリンパ節を傷つけ、がん組織を露出させてしまう可能性があるからです。 そうなると、周辺にがん細胞が広がるリスクがあります。これを避けるために、リンパ節だけでなく脂肪も含めて切除する「リンパ節廓清」が行われているのです。

ただし注意が必要なのは、手術前に「リンパ節郭清を省略できる」と判断された場合でも、実際に手術を行った際に、患者さんの状態次第では「リンパ節郭清」を行う場合があることです。

医師は、手術中に患者さんの子宮のまわりの状態を詳しく観察します。 このとき、子宮の外にがんが広がっていることを確認した場合には、可能な限りその部分の切除を行うと同時に「リンパ節郭清」も行います。


1) 「リンパ節郭清」そもそも、なぜ必要なの?

「リンパ節郭清」を行う目的は、切除したリンパ節を詳しく調べ、転移があるかどうかを確認することです。

リンパ節に転移している場合、再発リスクが高いことがわかっています。 そこで再発リスクを確認するため、「リンパ節郭清」を行って、リンパ節への転移の有無を確認するのです。その結果、リンパ節に転移しているとわかった場合は、手術後に追加の治療を行います。これを「術後補助療法」と呼びます。

「リンパ節郭清」の目的としてもう1つ考えられるのは、予後(治癒の見込み)がよくなる可能性があることです。 「予後がよくなること」が期待できるのは、切除したリンパ節に転移があった場合、がんが転移している部分を体外に取り出せたことになるからです。 しかし、実際に予後が改善されるかについて、現時点では医学的証拠はなく、はっきりした結論は出ていません。そのため、今のところリンパ節郭清の目的は、「リンパ節転移の確認」に限定されている状態です。


2) 子宮体がんの「リンパ節郭清」には2種類ある

子宮体がんの手術療法の際に行われる「リンパ節郭清」には、骨盤内にある「骨盤リンパ節」を切除する「骨盤リンパ節郭清」と、 腹部大動脈周辺にある「傍大動脈(ぼうだいどうみゃく)リンパ節」を切除する「傍大動脈リンパ節郭清」の2種類があります。

この2種類のリンパ節郭清のうち、「骨盤リンパ節郭清」によってリンパ浮腫は起こります。

3) 「リンパ節郭清」の範囲は患者さんの状態によって決まる

子宮体がんの手術療法で行われる「リンパ節郭清」には、2つのパターンがあります。

 ①骨盤リンパ節郭清のみ
 ②骨盤リンパ節郭清+傍大動脈リンパ節郭清

①と②のどちらを行うかは、患者さんのステージ、組織型(類内膜がんの場合「グレード」を含む)などを考慮して決定します。
ただし、現時点では②(より広範囲の郭清)を行うことで治療効果の向上が期待できるのか、はっきりした結論が出ていません。 そのため、医療施設によっては、同じ状態の患者さんでも、リンパ節郭清を行う範囲が異なる場合があります。

リンパ浮腫を防ぐためリンパ節郭清を「最小限にする」研究が行われている!

子宮体がんの手術療法では、以前は、すべての患者さんに対してリンパ節郭清を行っていました。 しかし、リンパ節郭清を行うと、リンパ浮腫、リンパ嚢胞、乳糜瘻などの合併症のリスクがあるので、最近では、できる限り減らす傾向にあります。 すでに紹介したようにリンパ節に転移しているリスクが低いと考えられる患者さんでは、リンパ節郭清が省略されます。 そのほかにも、リンパ節郭清の範囲を最小限にするための研究が行われています。


1) 「センチネルリンパ節」をチェック、不要なリンパ節郭清をなくす

「センチネルリンパ節」とは、腫瘍がリンパ節に転移する際、最初に転移するリンパ節です。 そこで「センチネルリンパ節」だけを切除して検査(センチネルリンパ節生検)を行い、転移がないことを確認できれば、それ以外のリンパ節にも転移がないと推定できます。つまり、リンパ節郭清を省略できるのです。

すでに、乳がんの手術では「センチネルリンパ節生検」を行い、センチネルリンパ節に転移がないことが確認できた場合には、リンパ節郭清を省略する方法がとられています。

一方、子宮体がんでは、センチネルリンパ節を見つける方法や、「センチネルリンパ節生検」の進め方などについて標準的な方法が確立されていない状態で、 今後、研究が行われる段階にあります。
ほかにも「センチネルリンパ節生検」の代わりに、遺伝子を解析することでリンパ節の転移の有無を確認する方法の研究も行われています。


2) リンパ節郭清の範囲を最小限にする

すでに説明したように、「骨盤リンパ節郭清+傍大動脈リンパ節郭清」と郭清の範囲を広げることで治療成果が上がるのか、はっきりした結論が得られていません。

このような状態を改善するため、現在、「骨盤リンパ節郭清」と「骨盤リンパ節郭清+傍大動脈リンパ節郭清」の治療効果を比較する臨床試験が行われています。 この試験の結果によっては、将来「傍大動脈リンパ節郭清」が省略される、もしくは積極的に推奨される可能性があります。

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