「緩和ケアは進行したがんの患者さんが受けるもの」というイメージがあるかもしれません。しかし実際は、「緩和ケア」は胃がんと診断されたときから活用が可能です。
「緩和ケア」の対象は、からだや心のつらさだけではありません。社会的な苦痛も「緩和ケア」の対象になっています。例えば経済的な問題や、就労に関する悩み事などについても、相談したり、サポートを受けたりすることができます。
治療に前向きに取り組むためにも、また、療養生活の質を高めるためにも、「緩和ケア」をうまく活用しましょう。
「緩和ケア」で緩和できる「つらさ」とは?
1) 体に現れるつらい症状
痛み、吐き気、嘔吐、息苦しい、食欲がない、だるさなど
2) 心のつらさ
気分が落ち込む、落ち着かない、治療や予後についての不安、孤独感など心のつらさを感じているのは、患者さんだけでなくご家族も同じです。緩和ケアは患者さんだけでなく、ご家族も活用することができます。
3) 社会的な問題
医療費の問題、退院後の就労、転院や自宅での療養についての不安など
思いを伝えることで「つらさ」が和らぐ
医師や看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカー、病院によってはがん相談員などが「緩和ケア」を担当します。患者さんだけでなく、そのご家族もサポートします。
患者さんやご家族の心の中には、様々な思いがあるのではないでしょうか? その思いを一人で抱え込まず、ほんの少しでも伝えていただくことで、心のつらさが和らぐことがあります。ご自身の思いを伝える相手は、「緩和ケア」を担当するどの職種のスタッフでも構いません。
胃がんによる痛みは改善できる
「緩和ケア」は、様々な症状の改善を目的としますが、ここでは最も頻度が高い痛みについて解説します。胃がんが原因で起こる痛みを我慢すると、体力を消耗するだけでなく、気持ちまで落ち込み、生活の質が低下します。痛みは、痛み止めの薬を適切に使うことで改善できます。真面目な患者さんほど病気と向き合うとき、「痛みは仕方ない」とあきらめがちです。しかし、医療スタッフは、「痛みをゼロに近づけること」を痛みのコントロールの目標にしています。痛いと感じるときは、我慢せず、すぐに医師や看護師に伝えましょう。
1) 痛み止めは、痛みの強さに合わせて用意されている
痛みの段階を3つのステップに分け、ステップごとに使用する鎮痛剤が決められています。ステップ1に使用されるのは一般的な鎮痛剤と鎮痛補助剤です。ステップ2以降ではステップ1で使用される薬剤に加えて、「オピオイド鎮痛薬」と呼ばれる薬も合わせて使用されます。
2) オピオイド鎮痛薬とは?
オピオイド鎮痛薬は医療用麻薬と呼ばれ、痛みを改善する効果が強い薬です。「麻薬」という言葉を聞くと「怖い薬では」とイメージされるかもしれません。しかし医療用麻薬は、医師の指導のもとで正しく使用すれば、「使用をやめられなくなる」という依存性が生じることがほとんどないことがわかっています。
オピオイド鎮痛薬の主な副作用は、吐き気、便秘、眠気などです。いずれの症状にも対処法があるので、これらの症状がある場合は、我慢せずに医師や看護師に伝えてください。
監修医師
春田 周宇介 Haruta Shusuke
虎の門病院
専門分野:消化器外科(上部消化管)
専門医・認定医:
日本外科学会 専門医・指導医、日本消化器外科学会 専門医・指導医、日本内視鏡外科学会 技術認定医(胃)、日本消化器病学会 専門医など
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。
浦辺 雅之 Masayuki Urabe
虎の門病院
専門分野:消化器外科
専門医・認定医:
外科学会専門医、消化器外科学会専門医、消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、食道学会食道科認定医、がん治療認定医機構がん治療認定医
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。
小川 雄介 Yusuke Ogawa
虎の門病院
専門分野:一般外科、消化器外科
専門医・認定医:
日本外科学会外科専門医
*本監修は、医学的な内容を対象としています。サイト内に掲載されている患者の悩みなどは含まれていません。