前立腺がんの監視療法は、初期の前立腺がんを過剰に治療することを防ぐために行われます。
監視療法を安全に行うために、適応となる基準が決められているだけでなく、監視療法の開始後も、定期的に検査を行い前立腺がんの状態を見守ります。仮に前立腺がんが進行していることがわかった場合には、手術や放射線治療の開始を検討します。
監視療法がスタートすると、「前立腺がんが体内に残っている」という事実から、不安に感じる患者さんもいます。そうした不安とどのようにつきあっていけばよいのでしょうか?
前立腺がんを見守る
その不安にどう対処すればよい?
国内の研究結果によると、監視療法を開始したときと1年後の状態を比較すると、健康状態に関するQOL(Quality of Life:生活の質)には優位な差がないことがわかっています。
しかし、その人の性格によっては、気分の落ち込みなどが起こる可能性もあります。実際に不安が大きく、QOLが低下してしまう場合には、監視療法を中止して手術や放射線治療を検討する必要もあります。そのためにも、まず主治医と相談することが大切です。ただし主治医と相談しづらいケースもあるので、その場合には、セカンドオピニオンを検討するとよいでしょう。
一方、漠然とした不安があるケースでは、前立腺がんの監視療法について理解を深めることで不安を解消できる場合もあります。そのためにも、前立腺がんの監視療法について詳しく見ていきましょう。
前立腺がんの監視療法適応となる基準とは?
PSA、ステージ(病期)、陽性コア数、グリソンスコア(悪性度)によって以下のように決められています。この基準は、さまざまな研究の成果に基づいて決められた、科学的な根拠があるものです。
PSA | 10ng/mL以下 |
ステージ | T2以下 |
陽性コア数 | 2本以下(MRIを活用した「新しい生検」の場合はこの条件は除外) |
グリソンスコア | 6、7の一部 |
「陽性コア数」とは、前立腺の生検結果の一部です。生検は、前立腺に針を刺して組織を採取することで行われます。従来の「系統的生検」では10~12か所に針を刺しますが、それぞれの針から採取された組織からがん細胞が発見された場合「陽性コア」と呼ばれます。この数が多いほど、がんが広がっていることが推測されるため、「陽性コア数」が基準に含まれているのです。
一方、MRIを活用した「新しい生検」では、MRIの画像データを参照することで、前立腺がんが疑われる部分を中心に針を刺します。このため「新しい生検」を行った場合、従来の生検よりも監視療法が適切かどうか、より正確に評価できます。
前立腺がんワンポイント
海外では監視療法の適応範囲が広がっている
日本以外でも、監視療法に関する研究が進行しています。その結果から欧州やカナダでは、70歳以上ではグリソンスコア4+3=7までが許容されるようになっています。日本でも現在進行中の研究結果から、将来、適応範囲が広がる可能性があります。
前立腺がんの監視療法
どのように監視を行うのか?
前立腺がんのマーカーであるPSAの検査と生検を定期的に行います。
PSA検査 | 3~6カ月ごと |
生検 | 1~3年ごと, PSA値が上昇してきたとき |
このうち生検のタイミングについては、将来的に変化する可能性があります。理由は、MRIによる画像診断を行うことで、前立腺がんの大きさと位置をある程度特定できるからです。
MRI検査を定期的に行い、前立腺がんの大きさに変化がないかを確認することで、生検が不要になる可能性があります。そうなれば、「定期的に生検を受ける」という負担を減らせることになります。
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